【戦術解説】38節レビュー V長崎VS|徳島ヴォルティス|ビルドアップの相違による支配率

 ついに、ようやく、V-ファーレン長崎がJ1へ昇格した。J2最終節をアウェイの地で徳島ヴォルティスと対戦したV-ファーレン長崎は1-1の引き分けの結果、3位千葉と勝点1差をつけてリーグ2位となり、8年ぶりにJ1の舞台へと返り咲く。昇格する機会は決して多くないものであるため、それを目の当たりにしたのはファンとして感慨深いものである。

 この試合は、昇格が決まるかどうかという試合であるため、内容より結果が求められるものであるが私としては最後まで戦術的にこの試合がどのような内容であったかはまとめておきたい。正直、昇格が決まったことや今シーズンが終わったことでこの試合の内容はもう気にしない方が多いと思うが、最終的に来シーズンどのような補強や戦い方の修正が必要であるのかが見えてくるのではないかと思うため、この投稿を読んでファン・サポーターが各々考えるきっかけになればと思う。

フォーメーション・スタメン

 長崎は[3-4-2-1]の基本布陣であり、メンバーは前節と変更なし。
 徳島も[3-4-2-1]の基本布陣であり、こちらも前節とメンバー変更なし。

 両チームともフォーメーションとスタメンに変更がなく、これが自信を持ったチーム編成であることが伺えた。

ボール保持された長崎|ビルドアップの違い

 前半からホームである徳島にボールを保持され、攻められる時間が長くなった長崎であった。これは果たして、ホームの雰囲気や自動昇格をするために勝利しかない徳島だからという理由でボールを保持されたのだろうか。私としては、両チームのビルドアップの違いがボール保持率に違いを生んだ要因であるとみている。

長崎のビルドアップ|容易にハマるサイド

 この試合は、両チームとも[3-4-2-1]のフォーメーションでありミラーゲームであることから、それぞれの局面で1対1となりやすい。それを踏まえて、長崎のビルドアップがどのようであったかを考えるが、まず、長崎はボール保持にあまりこだわっていなかった。これは、この試合だけではなく今シーズン終盤にかけてみられたものである。長崎に対して3バックで対策してくるチームが多かったこともあり、主に3バック脇のスペースをCBからロングフィードで狙っていた

 しかし、常に3バック脇を狙うのではなく地上からボールを繋ぐことも勿論ある。ただ、このボールを繋ぐ際に長崎は容易にハマりやすい。

 前述した通り、[3-4-2-1]のミラーゲームであり、徳島は[5-2-3]でプレスを行ってくるため、長崎はサイドのWBへボールを出す際に、相手WBが前方へスライドしてプレスを強めるだけで前にボールを運ぶことが難しくなる。
 

 このように、ミラーゲームだと簡単にそれぞれの局面で1対1となるため、ビルドアップ時は選手の配置を変えて対応することがみられるのだが長崎は行わない。ロングフィードを主体にしていることや選手へのタスクを減らして選手個人の能力を活かそうという戦略であると思う。ただ、それがこの試合では前線でボールを収めることができずに、徳島に攻められる時間が長くなった要因となった。

徳島のビルドアップ|キャンセルするサイドの選択

 では、徳島はどのようなビルドアップを行っていたのだろうか。同じ[3-4-2-1]であるならば、長崎と同じように攻撃でハマりやすいはずであるが、徳島は最終ラインでボールを保持した際に2つのパターンでプレス回避をしやすいようにしていた。

1つ目が、GK+3CBの最終ライン4枚で行うパターン。2つ目がVO+3CBの最終ライン4枚で行うパターンである。

 いずれも、長崎が[5-2-3]のミドルブロックを組むことが多いことで、前線3枚に対して4枚の数的優位を作れることでボール保持しやすいようにしていた。
 さらに、長崎のビルドアップと比較して大きく違うのが「簡単にサイドにボールを預けない」。徳島は、WBにパスが出せそうでも簡単にパスを出す選択をキャンセルする。なぜなら、前述したようにサイドのWBへパスを出しても長崎のWBが前方へスライドしてプレスすればボールを前に運ぶのが難しくなるからだ。そのため、徳島は簡単にWBへパスを出さずにボールをCBかGKまで戻して攻撃を組み立てる。

 ボールを戻したら逆サイドへボールを運ぶといったように、左右へ揺さぶりながら徐々に長崎のブロックを押しこんでいく。このような徳島の組み立てによってボール保持率を徳島が高める要因となった。

選手交代からのギアチェンジ

 前半41分に徳島に先制された長崎は、後半開始からEジュニオ→山崎、澤田→松本の2人交代で巻き返しを図る。ポジションもマテウスを1トップとし、IHに山崎と松本になる変更。ただ、この変更によって大きく流れが変わったわけではなく、60分からのDピトゥカ→中村、米田→笠柳の交代から変わる。

 中村はテクニカルな選手であり、VOでの出場であるがドリブルによりボールを運ぶことができるため攻撃時に後方から前進することができる。そして、68分の長崎の得点シーンでは笠柳のアシストから生まれる。VO山口からのロングフィードを受けた笠柳がボールをトラップし、反発ステップによって徳島の右WB柳澤を抜き去ったシーンは流石であった。高木監督のズバリ交代策によって同点に追いついたものである。

来シーズンに向けて

 下平前監督から高木監督になってから選手の個を活かした戦い方によってJ2リーグを2位で終わった長崎。個を活かしてきたチームであるが来シーズンはJ1の舞台である。J2よりも個の質が高いリーグであるため、今シーズンのような戦い方は通用しないことは明白だ。そのため、これまでの試合とは違い細かい戦術を詰めていく必要があるのだが、そこまで戦術を詰めなくても今シーズン最多得点できたチームが戦術を詰めることでどのよう変貌を遂げるのかがワクワクして仕方がない。

 来シーズンも高木監督が続投するようであるため3バックは継続されるだろう。もともと、今シーズンは4バックを前提とした編成であったため、3バック仕様にするためにチームの編成は大きく変わるのではないだろうか。私としては、WBのポジションがどのようになるのかが気になるところである。改めて、WBというポジションは、SBよりも攻撃力を求められ、SHよりも守備を求められる適性が難しいポジションだなと感じたシーズンであった。

 来シーズンは、百年構想リーグという昇降格がないリーグがあるため、選手としてもチームとしてもチャレンジできるリーグと捉えられるかもしれない。愛着が湧いた選手が離れるのは寂しいが、新しい選手を迎えるのも楽しみであるのが移籍期間だ。この間、ファン・サポーターは一喜一憂することになり、ある意味盛り上がる期間である。私も、毎日SNSをみて今か今かとソワソワして移籍情報をみており来シーズンが楽しみである。

最後に

 昨年11月から始めたブログですが、何試合かサボって書けなかったことは反省する点でした。しかし、ブログの更新をXで発信した際に「わかりやすい」「楽しみにしています」といった反応があり、これが大きくモチベーションを上げるきっかけになったことでブログを書くことを続けてこれました。読んで下さった方には本当に感謝しています、ありがとうございます。
 また、Xでリポストしてくださるおかげでフォロワーさんが増えたこともモチベーションが上がる理由であり本当にありがたかったです、これからもよろしくお願いします。笑

 拙い文章ですが、これからもブログは続けていこうと思います。ひとまず、来シーズン開始まで更新する予定はありませんが、気になった海外クラブの戦術を書くかもしれないので、もし書いたら読んでもらえたら幸いです。

 改めて、、、V-ファーレン長崎昇格おめでとう!!!
 来シーズンもよろしくお願いします!!!

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