【戦術分析】レビュー 2025年 J2第15節 V・ファーレン長崎VSモンテディオ山形

 前節のアウェイ富山戦にて初のアウェイでの勝利を収めたV・ファーレン長崎は、ホームでモンテディオ山形と対戦し1-1の引き分けに終わり連勝とはならなかった。
 やはり、満員プロジェクトでは勝利できなかった…。
 勝利できなかったことによる残念な気持ちがあるが、特に前半の両チームがみせたサッカーは見応えのある内容であり、戦術的にみて面白い内容であった。両チームが自分たちのサッカーの意地をみせた試合を戦術的に書いていきたいと思う。

フォーメーション・スタメン

長崎は4-2-3-1の基本布陣。前節からDF照山→新井、MF松本→山口、MF青木→マルコスの3人変更。

 山形は3-4-1-2の基本布陣。前節からMF吉田→坂本の1人変更。

ハイプレスとビルドアップによる攻防

 前半開始から山形は5-2-3の形でハイプレスを行ってきた。特に、長崎のSBへパスが渡る際に山形のWBが大きく縦スライドして、プレス強度を強めて奪い所と設定していた。この山形のハイプレスに長崎は面を食らった形となり、ビルドアップが機能していなかった。
 そんな中で山形が先制点をとり、山形としては理想的な形での試合の入りとなった。
 またしても、クロスによる失点でありクロス対応の課題は克服されず、見慣れた光景となってしまっているのは残念に思う。
 
 しかし、そこから長崎は山形のハイプレスに対して対処する。山形はSBに強くプレスしてくるが、WBの縦スライドの距離が長いことを利用してWBを引き付けてからワン・ツーでプレス回避をすることが見られるようになった。
 そうなると、山形はハイプレスを徐々に行いずらくなり、長崎がボール保持率を高めるようになった。そこから、左WG増山を起点とする左サイドからの攻撃によりチャンス、決定機を生み出すようになる。特に、13:20のシーンでは増山の個人技により相手DFをドリブルで抜き、シュート性の低いクロスにフアンマとマテウスがゴール前に合わせようとした場面は非常に惜しかった。

 そして、ボール保持率を高めることができた長崎は、さらに山形に対しハイプレスを行うようになる。4-4-2のミドルブロックで守っていたのを両WGとVOが高い位置でポジショニングすることで、4-2-4のハイプレスに可変させて山形のビルドアップを封じた。
 そこから、前半30分以降の山形はハイプレスを行ってきた長崎に対してDF後方へのロングボール主体となっていたが、長崎はロングボール後のセカンドボールを回収することができていた。

数的不利でも魅せたハードワーク

後半開始してからの53分にFWフアンマのレッドカードに提示。フアンマとしては「故意ではなかった」ということだが、執拗なマークにフラストレーションを溜めた報復行為に近いものであったため、あれを長崎のファン・サポーターは擁護しすぎるのはよくない。

 早い時間帯で数的不利になった長崎であったが、人数が少ないことを感じないほど長崎はボールを持つことができていた。山形側にも問題があるように思えるが、なにより長崎の選手がハードワークしていたことで補っていたのも要因であった。

 その選手の努力が実ったのか90+9分にFW山崎がPKを獲得し、劇的な同点にて幕を閉じることになる。 キッカーも山崎が担当したことで待望の移籍後初ゴールを記録した。
 このファウルによるPKは、若干山崎のシュミレーションのようにも見えたが、実際に足を蹴られてはいたためファウルは妥当であるだろう。ようやく山崎が仕事をしてくれたと感じたゴールであった。

総括・展望

 この試合の前半は、両チームがビルドアップとハイプレスの攻防が非常に見応えのあるものであった。それだけに、後半開始早々のフアンマのレッドカードによる退場にて数的不利になったのは勿体なかく、退場者がいない後半の試合をみてみたかった。しかし、選手のハードワークにより数的不利を感じさせない試合展開をみせてくれたのは素晴らしく少し感動してしまった。

 試合が終わってみれば両チームの現状の状態を表す一戦であったように思える。なかなか浮上するきっかけを掴めない山形と、徐々にチーム状態が上向きになってきた長崎。

 「また引き分けで勝てなかった、、、。」と結果だけをみて思うファン・サポーターがいるかもしれないが、この試合を見て内容をみれば確実にチーム状態はよくなっている。でなければ、アディショナルタイムに同点弾を生み出すことはできない。

 ただ、FWフアンマが次節から3試合出場停止の処分が下されたため、大分・千葉・水戸の長崎より上位チームとの対戦に不安が残る。しかし、この試合でFW山崎がやっと得点してくれたため、これを機に活躍してくれることを願いたい。

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