【戦術解説】レビュー 2025年 J2第20節 V・ファーレン長崎VSロアッソ熊本

 2025シーズンのJ2後半戦が始まり、ロアッソ熊本と対戦したV・ファーレン長崎は3-1で快勝した。後半戦から下平監督から高木監督へ後退しての試合であったため、幸先がいいスタートできたといえる。
 
 試合内容を見て、会見でも言っていたように前監督からのサッカーを大きく変えずボールを繋ぐことは続けており、長崎のストロングである個の能力を十分に活かすサッカーをしていたため、戦術的に書いていきたいと思う。

フォーメーション

長崎は変わらず3-4-2-1の基本布陣。
澤田は今シーズンリーグでの初スタメン。また、前節失点に絡んだ照山はベンチへ。

熊本は3-3-3-1の基本布陣。

熊本のマンツーマンディフェンス

 ホームの開幕戦で対戦した時と同様に、熊本は長崎のビルドアップ時はマンツーマンディフェンスを行ってきた。
 開幕戦のレビューは以下も参照。
⇒「第1節V・ファーレン長崎VSロアッソ熊本

 この試合でのマンツーマンディフェンスに関しても動画を使用して説明する。

 熊本のマンツーマンディフェンスはシンプルである。
 1トップ+両WGが縦スライドし前線3枚で長崎の3バックと同数となる。
 また、縦関係になっている1VOと1シャドーが長崎の2VOをマークすればマンマークとなる。

対する長崎の前進とビルドアップ

 開幕戦での長崎は、熊本のマンツーマンディフェンスによってビルドアップが難しかったことでロングボールを多用していた。
 しかし、前節から長崎はビルドアップでの工夫がなされており、開幕戦と違いロングボールだけに頼るチームではなくなっている。

 22:35あたりのシーンであるが、GKからパスで前を向くVO安部。そこから、シャドーの澤田が降りてボールをワンタッチで落とし、WG増山が内側に入って前向きにボールを受け、前方へスルーパスを出す。

 前節から長崎のビルドアップでは、選手が前を向いてボールを受ける形をつくる“レイオフ”がみられている。

 “レイオフ”の何が効果的なのか?

 ポストプレーに近いのだが、ボールを受けて落とし味方の選手が前を向けることで、相手ゴールに向かってプレーできる点が最も大きい。

 もし、ボールを受けた澤田に対して増山が連動していなければ、澤田を後ろ向きでボールを受けるだけで、相手が困るようなプレーをすることが難しい。

 このような一連のプレーは、攻撃のテンポを落とさずに素早く攻撃することができ、特にフィジカルに優れていない選手であれば相手を背負わずともできるプレーである。

長崎の守備

 長崎の守備に関しても触れておきたい。特に、この試合で澤田がスタメン起用された理由でもあると考えられる。

 1トップのフアンマは積極的にCBへはプレスを行わず、1VOを背中で消すようにポジショニングする。
 その代わり、2シャドーのマテウスと澤田が左右CBへマークとプレスを行う。特に、澤田は下がってきた21番の選手にも2度追いしてマークをしていた。

 守備にも貢献していた澤田であったため、フアンマの守備を補填する意味で澤田が起用された理由の1つであると考える。

個人能力の差

 この試合では、熊本の選手と長崎の選手で選手個人の能力の差があると改めて感じた。特に外国籍選手とマッチアップした際のフィジカルの差が大きい。ボールを失いそうになっても相手を吹き飛ばしてボールを持つことができ前進することが可能であった。

 また、ビルドアップが難しくてもフアンマやマテウスにロングボールを使うことでボールを収めることができる。

総括・展望

 開幕戦と違ってビルドアップの精度がよくなっている点と長崎の個の質によって、容易に試合を進めることができていた。
 しかし、前半の2点目前の熊本の攻撃が決まっていたら試合展開は違っていただろう。攻撃力は申し分ないため、失点数を2失点以内に収めることができれば引き分け以上に持ち込めるはずだ。

 次節の相手はモンテディオ山形である。リーグ順位が15位であるが戦力的には上位にいるべきチームだ。前節秋田と対戦した山形は、佐藤尽暫定監督のもと逆転勝利している。
 6月25日に山形の公式から横内昭展氏の監督就任を発表した。昨年のジュビロ磐田の監督であり、日本代表森保監督の参謀であった人だ。

 監督が新しく変わった者同士のチームであり、チームの方向が試行錯誤する両者であるが、アウェイの地で勝利して久々の連勝を飾ってほしい。

旅立つ松澤海斗

 熊本戦にて松澤海斗が海外へ旅立つ。
 移籍先はベルギーのシントトロイデンが有力とされており、日本人が多く在籍している。現日本代表の遠藤航、冨安健洋、鎌田大地も在籍していたチームであり、今後のステップアップを考えると良いだろう。

 24歳という年齢で海外志向が高かった松澤にとっては十分決断できる条件であったため、ファン・サポーターにとって悲しいが、やはり応援したい気持ちの方が強いだろう。

 ただ、懸念している点はシーズンを通しての出場時間が少なかったことやインテンシティ、守備能力等、シュート・パスの精度等である。
 特に、リーグ戦での出場時間が少なかったことはリーグ通してのケアの仕方、疲労の蓄積等によって怪我に繋がるリスクは高い。なおさらフィジカル面ではヨーロッパの方が強い。
 
 ベルギーリーグに所属していた日本人の話では、チームで戦うというより選手個々で戦うイメージであったという声がある。松澤のドリブル能力は素晴らしいものだ。しかし、J2での成績は圧倒的なものを残しているわけではない。特にヨーロッパのではアシスト・得点といった結果を出さないとパスが来ないため、この挑戦は松澤にとって簡単なものではないと考えている。

 DAZNで追えるベルギーリーグであるため、シントトロイデンの試合もこれから追っていきたいと思う。長崎の若武者がこれからどのような変貌を遂げるか楽しみだ。

世界をぶち抜け、松澤海斗!!
 

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