百年構想リーグをホームで迎えたV-ファーレン長崎であったが、サンフレッチェ広島に1-3の完敗に終わった。広島としては盤石な勝利、長崎としては力の差を感じた試合内容であった。
しかし、J1の強豪である広島に対して長崎が何もできなかったわけではない。試合展開を戦術的にみていき、何がこの試合での収穫と課題であったかを考察していきたい思う。
フォーメーション・スタメン

両チームとも基本フォーメーションは[3-4-2-1]。ミラーゲームとなった試合であったが、両チームとも攻守において違う可変をみせていた。
特に、長崎に関しては昨シーズンと比較して違う戦術をみせていたため、主にこちらを戦術的に説明していく。
前半30分までの展開|4バックシステムの導入
試合開始30分までは膠着した試合展開であった。開幕戦ということもあり選手も入りが硬く、始めの10分はボールが地につかずロングボールを多用することが両チームともみられた。
まず、広島の守備に関してであるが、昨シーズンとは違い積極的に前線からハイプレスを行いマンツーマンディフェンスをするのではなく、ミドルブロックからのミドルプレスが主であった。[5-2-3]ブロックから前線3枚によって相手のパスコースを制限して徐々にプレスを行ってくる。
それに対して、長崎のビルドアップであるがここが昨シーズンと大きく違う点である。昨シーズンの長崎は、基本フォーメーションである[3-4-2-1]のままビルドアップを行っていた。可変するわけではなかったため、対戦相手はその形に合わせてプレスを行うだけで容易に追い込むことができていた。
しかし、長崎がこの試合でみせたのは‘4バックシステム’の導入だ。左CBの江川を左SB位置へ広げ、右WB翁長を右SBの位置へ下げることで4バックを形成。これにより、広島のブロックと長崎の4バックをかみ合わせると、広島の前線3枚に対して長崎は後方4枚であるため4対3の数的優位を作ることができ、プレスを回避できる構図を作ることができていた。そして、サイドバックの位置にポジショニングした江川と翁長からシャドーに向けてパスを通すことで、ボールを前進させて広島の守備ブロック攻略を図っていた。
ただ、それでも広島ブロックを長崎は崩すことができない。長崎の守備と比較してではあるが要因として2つ挙げられ、1つ目が広島の最終ラインが高いことでブロックの縦幅が狭くコンパクトな守備であったこと。2つ目は、広島の全選手がプレスバックを行う意識が高かったことが挙げられる。
ブロックがコンパクトであると、選手間の距離が短いことで守備でのカバーリングを素早く行うことができる。そうなると、特に中央では選手が密集しているため攻略が難しい。また、広島の選手は抜かれても2度追いするため、前後で挟まれる形になりやすいことが非常に厄介であった。加えて、GK大迫の安定したセービングがあるのだから本当に強固な守備である。
前半30分以降の展開|修正した広島
なかなか広島の守備を攻略できない長崎に対して、ボールを保持される時間が多かった広島はプレス方法を修正することで流れを引き寄せた。
前述したように[5-2-3]での前線3枚からのプレスでは、4バックの長崎に対してプレスしてもハメることができない。そこで、左SBに対しては左IHが対応し、右SBに対しては左WBが素早く縦スライドして対応するように修正してきた。これは、長崎の構造的に右WBが下がってしまうことで右WBの前に選手がいなくなるため、広島の左WBが躊躇なく前進できるためだ。これにより、マンツーマンディフェンスが可能となったことで長崎はビルドアップがスムーズにいかなくなった。
こうなると、長崎としてはパスの出し所がなくなるためFWサンタナとIHマテウスにロングボールを蹴ることになるのだが、このセカンドボールを広島に拾われることになり長崎のボール保持率が下がることになった。広島がボールを保持するようになり、長崎の引いたブロックを攻略する流れになった中で35分の失点となる。
手痛い連続失点|選手交代による変化
後半に入り反撃を行いたい長崎であったが、50分・54分に手痛い連続失点により0-3の苦しい展開となってしまった。2失点目はCB進藤の対応ミスもあるが、GK大迫の正確なロングフィードを褒めるべきだろう。また、3失点目は後方から前進を図っていた長崎の攻撃を中盤でボールを奪い、ショートカウンターによっての得点であった。
広島としては、引いた相手に対してのブロック攻略ができたこととカウンターからの得点ができていたため、複数のパターンによって得点できたことで充実感を感じただろう。
対して、長崎は後半からどう修正してきたか。VO松本に代わってディエゴ ピトゥカが投入されたのだが、前半ではビルドアップから前進を図る際に、山口蛍の1VOであったがピトゥカが代わりに1VOとなり積極的にボールを受けて捌くことを行った。山口蛍と長谷川を含めて3人がボール前進に関わったことで長崎のボール保持率を再び高めることになる。
また、長谷川に関しては、広島の[5-2-3]ブロックの隙である‘2VO脇のスペース’にポジショニングしてボールを引き出すことが多くみられた。流れとしては、左WB岩崎が高い位置でポジショニングすることで、相手右WBをピン止めし、VO脇のスペースでボールを受けやすくなる。そこから、広島のVO1枚をサイドに引き付けて中央のスペースを作り出し、山口蛍とピトゥカがボールを前進するのに一役買っていた。
また、右WBとして途中出場したノーマン キャンベルについては、誰もがこれからの活躍に期待したいと思ったはずだ。目に見えてわかる圧倒的なスピードは見るものを虜にした。得点したシーンを振り返ると、後方からのワンタッチプレーが素晴らしかった。テンポの良い攻撃によって広島の守備を下げる時間を与えず、ノーマン キャンベルの前方のスペースを生み出した。そして、スピードが速いことでトラップしてからゴール前をみる時間を作ることができ、結果マテウスにパスしてJ1復帰後の初ゴールを生み出すことができた。
1点を返した後に、長崎はマテウスとノーマン キャンベルの得点チャンスがあったがいずれも決めることができなかった。やはり、あのようなシーンで得点できるかどうかがJ1で生き抜いていくことや上位に進出する時の差になるのだろうと思った。対戦相手である広島の得点をみて、‘決めきれるシーンは決める’という決定力の差を感じ、これが「J1上位の力か、、、」とスタジアムでみていて唖然としてしまった。
1番の課題は守備|外国籍選手の共存
この試合で顕著に表れた課題が‘外国籍選手の守備’をどうするかだろう。
昨シーズンの長崎は[5-2-3]のミドルブロックで守っていたが、この試合では[5-3-2]のミドルブロックで主に守備を行っていた。ただ、前線2枚がサンタナとマテウスになるろ、この2枚では相手のビルドアップと前進を容易に行わせてしまう。
そして、中盤は3枚であるためパスで左右に揺さぶりをかけられると中盤の選手のスライドが遅れることになり、WBとCBがスライドすることで守備ブロックが崩されやすくなる。[5-2-3]では中盤2枚の脇のスペースがリスクと考え[5-3-2]を採用したと考えるが、それでもサイドから攻略されるリスクはあった。
次節以降からこの問題をどうするかが注目ポイントになるだろう。DAZNの解説陣も言っていたが、これはレアル・マドリードでも同じ問題が起こっている。スター選手であり、チームの主力であるエンバぺとヴィニシウスを同時起用すると守備を行わないことで守備の大きな欠点となっている。外国籍選手を前線に2枚使い続けるのか、それとも1人スタメンから外すのか、これからどうするのか注目したい。
私の考察であるが、ここで[4-4-2]ブロックを採用するのはどうかと考える。
これは、以前天皇杯で浦和レッズと対戦した時がヒントになっている。この試合では、長崎の選手が1人レッドカードにより退場したことで[4-4-1]で守ることになったのだが、最終ラインと中盤の[4-4]のラインが対応できていたことで浦和の攻撃を凌ぎ勝利を収めた試合があった。
この均等に配置される[4-4]ブロックであれば、[5-3]の中盤3枚より素早くスライドをすることができるのではないかと考える。しかし、通説では5バックから4バックへ変更した場合、ディフェンス陣としては守備でカバーするエリアが広がるため、スライドに遅れが出やすいというのが問題となるため4バックで守るのは可能性が低いのかもしれない。
総括
広島との対戦は広島が長崎の出方をみて修正を図り、決めるべきところで決めた横綱相撲のような対応で長崎は完敗であった。しかし、長崎はビルドアップと前進に課題があった昨シーズンとは違い、4バックシステムの採用と長谷川・山口蛍・ピトゥカの3枚でボールを前進する形がみられたのは収穫であると思う。だが、守備において外国籍選手2人の起用により守備で容易に押し込まれてしまうことが大きな問題として現れた。この問題をどう対応していくかがこれから注目すべきポイントとなる。

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