【戦術解説】29節プレビュー V長崎VS RB大宮アルディージャ|大宮のハイプレスとカウンター

 代表ウィークによりリーグ戦が2週間空き2025シーズンも残り10試合となったのだが、このタイミングで上位争いをしている長崎と大宮が激突する。
 前回対戦では、長崎のホームで打ち合いの末3-3のドロー決着となった。長崎としてはアウェイにてリーグ再開となるため、自動昇格圏に入るためには負けられない一戦であり気を引き締めなければならない。

 また、前回対戦時とは違ってお互いフォーメーションを変更しての対戦となるため、改めて大宮のフォーメーションと戦い方をみたうえで予想される試合展開を戦術的に考察していこうと思う。

フォーメーション

※前節の起用された選手を記載。

長崎は[3-4-2-1]の基本布陣。前節累積警告により出場停止していた米田が先発となる可能性が高い。

大宮は[4-4-2]の基本布陣。22節まで[3-4-2-1]であったが、23節から[4-4-2]を採用している。
ちなみに、フォーメーションを変更してから3勝1分1敗の成績。

大宮の強み|ハイプレス

 まず、大宮の1番の強みと考えている守備からみていく。

 相手がビルドアップを行う場面では、大宮はハイプレスを行ってくる。2人のFW豊川・Oサンデーが献身的に前線から走ってパスコースを制限し、サイドに相手を追いこみハメてくる。また、必要に応じてSHが縦スライドして人数を同数にするようにプレスを行う。

 [4-4-2]の守備ではオーソドックスな方法であるが、前線の選手に合わせて後方の選手がスライドして対応する必要があるため連動して守備を行うことが重要である。
 リーグ前半戦の長崎も[4-4-2]で守っていたが、このようなハイプレスで守備を行ってはいなかった。おそらく、FWの守備のタスクを減らし体力を消耗させないことを理由としていたと考えられるが、このハイプレスによるリスクを考慮してとも考えられる。そのリスクが今回の大宮の守備の攻略の糸口となるはずだ。

長崎の対策

 では、ハイプレスによるリスクを考えると、チームのセットしたブロックを崩してスペースが生じることだ。そのため、ゾーンディフェンスができなくなる代わりにマンツーマンディフェンスでの対応となるのだが、「個の質」の差が攻略する糸口になるはずだ

 前述した大宮のプレスに対して、長崎の外国籍選手FWエジガル・フアンマやIHマテウスがポストプレーヤーとなれば、カウンターのように素早い攻撃が可能となる。
 特に、長崎はカウンターが強いためこの攻撃が最も効果的だ。

 また、これ以外にも効果的なのがボールを前進する際にトラップをせずにダイレクトでパスを繋げるような「ワンタッチプレー」によって相手のプレスを躱して前進する方法もある。大宮と前節対戦した札幌もこのプレーによって大宮のゴール前までボールを運びチャンスを演出していた。

大宮の強み|カウンター

 次に、大宮の攻撃に関してだが、まず大宮のデータからみていきたい。
 大宮のボール保持率はリーグ14位。KAGIが13位に対して、AGIが3位である。
 KAGI、AGIについては下記のとおりである。

KAGI

「守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」という観点から、チームの新守備指標「Keep Away from Goal Index」、略して「KAGI」を集計して公開します。具体的には、
・相手の攻撃時間のうち、自陣ゴールから遠い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
・相手の攻撃が始まってから、自陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が長い
場合に高い評価となるように指標化しています。

KAGI、AGIとは

AGI

「KAGI」と対になる指標として、「攻撃の際にどれだけ相手ゴールに近づけたか」を「Approach Goal Index」、略して「AGI」として公開します。「AGI」は「KAGI」とは逆に、
・攻撃時間のうち、相手ゴールに近い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
・攻撃が始まってから、敵陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が短い
場合に高い評価となるように指標化しています。

KAGI、AGIとは

 これを踏まえると、大宮はボールポゼッションすることが少なく、反対に素早くカウンターによって攻撃を行うチームであることがわかる。そして、このカウンターを成立させるために大宮の外国籍選手のオリオラ サンデー、ファビアン ゴンザレス、カプリーニなどの外国籍選手がポストプレーヤーとなり、そして得点者となるため要注意である。

長崎の対策

 言わずもがな、大宮の外国籍選手に対して長崎のCBが抑えることができるのかが注目ポイントだろう。しかし、それ以外でのカウンター対策を上げるならば、攻撃から守備への切り替えである「ネガティブトランジション」が重要だ。

 反対に、大宮からすれば素早いカウンターを行うために守備から攻撃への切り替えである「ポジティブトランジション」を行ってくるはずであるため、長崎の「ネガティブトランジション」と大宮の「ポジティブトランジション」の攻防が要注目ポイントであるといえる。

 そして、戦術的なファウルにも注目したい。長崎が大宮の守備を攻略しようと攻めている時にボールを奪われると、数的不利でのカウンターとなるかもしれない。この場合、長崎の選手がボールホルダーに対して軽く相手を止めるようにファウルをすることで、カウンターを阻止することができる。ただ、これはイエローカードの対象となる可能性があり、この試合では長崎の選手がイエローカードをもらうことがしばしばあるかもしれない。

総括

 この試合での注目ポイントは、①大宮のハイプレスをかいくぐれるか、②大宮のカウンターを防げるかの2点である。それぞれ、攻守においてのポイントであるためここを注目してみるだけでも試合観戦の面白さがぐっと変わるはずだ。

 残りリーグ10戦。対戦相手を見た際、長崎は上位チームとの対戦が多く残っており10戦中6戦は上位チーム(水戸、千葉、徳島、大宮、磐田、今治)であるため、一切気の抜けない試合が残っている。
 ここから駆け上がっていくためにも、2週間の中断明けの大宮戦はスタートから躓くわけにはいかない重要な一戦と言える。他会場の結果次第であるが自動昇格圏内に入れるチャンスであり、昇格のライバルである大宮を後退させておきたいところだ。

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