【戦術分析】プレビュー V長崎VSベガルタ仙台|仙台SHに要注意!

 シーズン開幕前に注目していた山場がついにくる。
 V・ファーレン長崎は、中断明けのホームにベガルタ仙台を迎えるが本当のリベンジマッチとなる。昨シーズンのプレーオフの悲しみと悔しさを忘れたファン・サポーターはいないだろう。両者の現在の順位と勝ち点差をみても今節最大の注目カードだ。

 現在、23節終了時点で仙台は3位で勝ち点41、長崎は8位で勝ち点38。長崎は勝利しても仙台より順位を上回ることはできないが、2位~8位まで勝ち点が3差であるためこの試合を落とすわけにはいかない。
 改めて、仙台がどのようなチームであるのかを戦術的に分析して、当日の試合を迎えることでより試合内容が鮮明になりやすいと思うため、ぜひ読んでほしい。

前回対戦時の内容を知りたい方はこちらもぜひ
⇒「J2第4節 V・ファーレン長崎VSベガルタ仙台【レビュー】

フォーメーション

長崎は3-4-2-1の基本布陣。
仙台は4-4-2の基本布陣。

前回対戦時から長崎は監督・フォーメーション・戦い方が違うため、前回対戦より試合内容は変わってくる。

仙台の攻撃

 23節までに仙台の総得点数は28点。上位8チームの中で下から3番目に得点が少ない。だが、選手の質が高いため自ずと攻撃の質も高く、長崎は監督交代から守備が安定してきたとはいえ油断はできない。特徴的な攻撃をするというわけではないが、基本的な攻撃方法と要注意選手をピックアップしていきたいと思う。

ビルドアップ|2トップの役割

 仙台は2トップの選手の特性により、繋いでビルドアップを行うこともできれば、ロングボールでボールを前進することができる。
 仙台のビルドアップ時は、4-4-2の基本布陣から4-2-3-1か4-1-2-3に可変して行う。どちらかと言うと4-2-3-1が多いのだが、いずれも2トップの一角であるFW荒木がライン間に降りてボールを受けてサイドへ捌くことが役割として振られている。

 ただ、仙台はビルドアップ時に徹底してボールを繋ぐポゼッションのチームではない。繋ぐのが難しいのであれば無理せず前線に向けてCB・GKがロングボールを送ることがよくみられるが、このロングボールに反応するのがFWエロンである。
 エロンは身長176㎝のため高身長ではないがフィジカルが強く足も速い。相手が仙台のビルドアップに対して前からハメるように守備を行ってくると、相手自陣には広いスペースができる。そこで、CBやGKからのロングボールにエロンが反応してボールを収めることができる。

両SHの得点関与

 仙台の得点関与で特徴的なのがFWの関与が少ないところだ。チームの得点ランキング1位がSH(サイドハーフ)で起用されている郷家だ。ちなみに、2位FWエロン、3位FW宮嶋となっている。また、アシストのランキングでは1位SH真瀬、2位SHオナイウ情滋、3位SH郷家である。

 単純な得点とアシストだけのデータでもSHがFWよりも得点に関与していることがわかる。特に、直近の試合で先発出場しているSH郷家と真瀬は要注意だ。
 左SHとして起用される郷家は、状況を打開するために果敢にドリブルで仕掛けるような選手ではない。左SBが高い位置をとった場合にハーフスペースにポジショニングしてライン間でボールを受けて相手を引き付ける動きをしたりと、ピッチの中央でプレーすることが多い。そのため、身長が183㎝あるためクロスから得点することがみられる。

 そして、逆サイドの右SH真瀬に関してはとにかく運動量が豊富な選手だ。後述するが守備での貢献度も高い。また、郷家より前への推進力があるためドリブルも仕掛けてくる。
 そのため、右サイドから攻めてボール前に折り返したところを左SH郷家がシュートするといった流れが多いかと思われる

仙台の守備

 仙台の失点数は21点でリーグ4位タイの堅守である。選手全員の守備の意識が高く、プレスの速さとスライドの連動性・攻守の切り替えが速いことで、相手はちまちまとボールを持つことができない。守りに入りすぎずに攻めるような守備を行っているのがよい。実際に図を使いながら説明していく。

人数を合わせたプレスと連動性

仙台の守備時のセットは4-4-2であるが、相手がビルドアップ時は両SHが高い位置をとって4-2-4となる。これは相手が4バックの場合であるが、これが3バックであれば右SH真瀬を高くポジショニングさせて4-3-3となる。そうなると、1対1の局面がピッチ上で多くなり仙台のDFは矢印を前にして強くプレスを行うことができる。

 また、相手に押し込まれて4-4-2のブロックを組んだとしても、まずライン間が狭くコンパクトなブロックを組んでいる。仮にライン間にボールが入れられた際、前後で素早くプレッシャーをかけることも徹底されていることで、長くボールを持たせずボールを奪取することができる。

展望

 この試合の焦点は、長崎が仙台の守備をどのように攻略するかであるとみている。
 そして、この試合の展開として長崎はロングボールが多くなることが予想している。

 長崎は直近の試合(鹿島、ソシエダ戦)では、攻撃時に3バックから4バックに可変してボール保持できるようにしていた。しかし、前述したとおり仙台は前から人数を合わせてプレスをしてくるため、このプレス回避を長崎ができるかが不安に思う。そのため、長崎は前線のフアンマ・マテウスを頼りにロングボールを多用するのではないかと考えている。

 ただ、気を付けてほしいのが中断前のいわき戦のように単調なロングボールとならないようにしてほしい。いわき戦みたく単調なロングボールだと攻撃が停滞するため、なにかしら工夫は必要だ。
 仙台の4-2-4のプレスで選手を自陣に引き込むことができれば、相手の中央は2人であるため手薄となりセカンドボールを拾いやすくなるはずだ。

 この仙台戦を皮切りに札幌・鳥栖の元J1勢の連戦が控えているため、中断明けの初戦を落とすわけにはいかない。中断中に若手の主力が抜けていったが、補強では元々長崎に在籍していた翁長聖が加わりポジティブな要素もある。この試合では、誰が先発でベンチに誰が入るかも注目されるだろう。

 なんにしても、昨年のプレーオフで敗れたホームピースタで宿敵仙台を負かしてほしい。夏に弱い長崎というレッテルをそろそろ剥がし、ここから上位に躍り出てほしいと願う。

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