【戦術分析】プレビュー 2025年 J2第15節 V・ファーレン長崎VSモンテディオ山形

 前節8試合ぶりの勝利で今シーズン初のアウェイでの勝利を収めたV・ファーレン長崎は、ホームの満員プロジェクトの下でモンテディオ山形と対戦する。現在、山形は長崎の1つ下の11位で勝点16。長崎は勝点20で負けても順位は入れ替わらないが、下を向いている場合ではなく上位に突き放されないためにもここで連勝して巻き返していかなければならない。
 開幕前は昇格候補として挙がっていた山形の攻守における戦術のポイントと長崎との相性を書いていきたいと思う。

フォーメーション

 長崎は4-1-2-3、山形は3-4-1-2の基本布陣。
 山形は第12節より4バックから3バックへ変更しており、変更後の成績は1勝1分け1敗となっている。

山形の攻撃

・ビルドアップ
 基本布陣の3-4-1-2の形で行う。山形の右WGは推進力があり攻撃的な選手(イサカ、吉尾)がいるため右サイドからの前進か、シャドーやFWが1.5列目に下がりボールを受けることでの中央からの前進を図ることが多く、左サイドからの前進は少ない。
 
 まず、右WGに関して吉尾はドリブルだけではなく中央までポジショニングしてチャンスを作り出す選手である。反対に、イサカ・ゼインは中央にポジショニングすることはないが縦の突破能力が高い選手である。

 そして、このチームの顔となるポジションがシャドーだ。シャドーとして出場する選手としては國分・土居であるが、このポジションではビルドアップ時に詰まりそうになれば低い位置でのサイドまでポジショニングしてボール回しを手助けしたり、2列目から相手DFライン裏へ裏向けしたりと自由度高いポジションである。

 ただ、山形はボールポゼッションに優れたチームであるが、CBからのロングパスも比較的多い印象である。FWの特徴をみると前線で体を張ってポストプレーするというわけでなく、1.5列目に下がってボールを受けるか、裏抜けしてボールを収めることを主に行ってくる。

・フィニッシュ
 データによると、総得点の19点のうち最も多いのが「30m未満のパスから」の得点が6点である。
 フィニッシュまでの形を描くと、前述したビルドアップの方法で前にボールを運び、FWの一瞬の抜け出しで得点するかチャンスを作り出すといった形となると考えられる。
 山形のFWディサロ、藤本、高橋などは、まさに相手DFでの駆け引きが上手な選手である。
 
 しかし、このチームの得点ランキングをみるとMF國分が最も得点しており、FWだけでなくシャドーの選手が最も得点に絡んでいることがわかる。

対する長崎の守備

 では、長崎の守備との相性をみてみるとどうなるか考察していくが、まず長崎の4-4-2、山形の3-4-1-2のフォーメーションを組み合わせてみる。

※赤色は数的不利な場所
 山形の後ろ3枚に対して長崎は2トップの2枚であるため、プレスはハマりにくいと考えられる。
 そして、中央の人数に関して山形が3枚に対して長崎は2枚であるため、ここも数的不利となり、中央からの前進がされやすくなると予想される。

 フォーメーションの組み合わせだけを考えると、山形のビルドアップをハメるのは難しくボールを保持される時間が長くなるとなると予想される。
 しかし、選手の特徴を踏まえて考えてみるとハメることもできるのではないかと思っている。

 山形が前節の先発でくるならば、右肩上がりのビルドアップとなることが予想される。
 長崎の右WGマルコスは、プレスで数的不利と判断すると積極的に前にプレスしてくれるため、マルコスのプレスに連動して守備が行えればハメることは可能かと思われる。

 山形の攻撃は、FWが1・5列目に上がってきたり、両WGが高い位置にポジションしてそこから中央に入ってきたりとポジションチェンジが多いため、守備ではマークの受け渡しが重要になってくる。
 
 長崎の失点はクロス・セットプレーが多いが、山形の得点は比較的クロス・セットプレーからは少ない。しかし、山形のFWは駆け引きや一瞬の裏抜けが上手いため長崎の守備陣が集中を切らさず守れるかが大切だ。

山形の守備

・プレス
 アタッキングサードからプレスを行うことが多いためハイプレスを行ってくる。
 プレス時の陣形は5-2-3。2トップがプレスを行い、シャドーが相手のACにマークする。さらに、2VOが相手の中盤をマークするため相手のボール回しを外回しにする。
 そして、サイドに誘導した後は最終ラインがボールサイドへスライドし、WBが前に出て最終ラインが4バック化する。

・ブロック
 完全に押し込まれた際は5-4-1で守備を行うのだが、ミドルブロックは相手に合わせてブロックを変更していると考察している。
 相手が3バックであれば5-2-3で守り、相手が4バックであれば4-4-2と変えてくる。

対する長崎の攻撃

 長崎は4バックであるため、前述した山形の守備であれば4-4-2のブロックを想定するかもしれないが、長崎はGK+CBの3枚でビルドアップを行うことが多いため、ここでは山形は5-2-3で守ってくると予想してフォーメーションをかみ合わせみる。

※黄色は数的同数、青色は数的優位or優位な位置
 まず、長崎の最終ライン3枚と相手の3枚で数的同数となりプレスがかかりやすい。
 その反面、中央の数は数的優位でありSBの位置はマークがされにくい。

 しかし、中盤の人数が多くても山形の前線3枚によって中央へのパスコースを切りながらプレスを行ってくることが予想されるため、中央にボールが集まりやすいとは言いにくい。
 また、SBに関しても直接マークされないが、山形のWBが大きく縦にスライドして対応してくるため、フリーでボールをもってサイドから組み立てることは難しいと予想される。

 では、長崎がポジションチェンジを行う場合を予想して、相手のプレス・ブロックを攻略する考えてみる。

 長崎の中盤はパスコースを消されてボールを受けることが難しいため、CBとSBの間に落ちてボールを受ける。SBはそのまま押し出されるように前にポジションし、WGはハーフスペースにポジションする。
 そこから、山形のWBが縦スライドしてきても前線のサイドで数的優位を作ることができる。

 特に、この前線のサイドで数的優位を作ることは長崎の左サイドが有効であると考えている。それは、山形の右WBが大きく前に出てきやすいことと、左WGで先発するであろう増山が前節に続きチャンスを作ってくれると予想しているからだ。

 また、山形が5-2-3で守ってくる場合、最終ラインと中盤のラインの間が空きやすいためボールを繋ぐだけでなくロングボールからのポストプレーによって前進することも必要である。

まとめ・展望

 まず、長崎の守備はプレスでハメることは難しく山形にボールを保持される時間が長くなることが予想される。また、山形の攻撃ではポジションチェンジが多くみられるため、マークを明確にして受け渡しをしっかり行う必要がある。

 次に、攻撃に関しては通常の4-1-2-3のままでは効果的な攻撃は行えず、少しポジションチェンジするような工夫が必要であると考える。特に、山形の右サイドから攻めるのが有効的であると思われるため、長崎の左サイドから攻撃することでチャンスが生まれやすいと予想される。
 また、山形のプレス時に最終ラインと中盤のライン間が空きやすいため、長崎はロングボールも使いって前進を図ることも行っていきたいところだ。

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