2026-27 第12節 V・ファーレン長崎 VS 浦和レッズ

 2026-27シーズン第12節、アウェイの地・埼玉スタジアム2002に乗り込み、強豪・浦和レッズとの一戦に挑んだ。

 前節の第11節において、長崎はホームで首位サンフレッチェ広島を相手に4-0という圧巻の完勝を飾っていた。キックオフ直後から高い強度で敵陣へと押し込み、我慢強い守備からの鋭いカウンターと効率的な決定力を発揮したそのパフォーマンスは、チームに大きな自信と勢いをもたらした。「この運動強度と戦術的規律を維持できれば、アウェイ浦和戦でも十分に内容と結果がついてくるはずだ」という大きな期待とともに迎えたのが、本節の浦和戦であった。

 しかし、90分間の激闘の末に突きつけられた結果は0-1の惜敗であった。他会場の結果によって順位こそ14位をキープしたものの、勝点を積み上げることはできなかった。

 前半は互角に近いボールポゼッション率を記録しながらも、決定機の数では浦和に上回られ、後半には守備陣形の修正が裏目に出る形で痛恨の決勝点を許してしまった。今回は、この浦和レッズ戦において両チームが展開した戦術的な噛み合わせ、長崎が抱えた構造的な課題、そして後半の陣形変更がなぜ機能しなかったのかについて掘り下げていく。

フォーメーション・スタメン

両チームの基本陣形と「ミスマッチ」の構造

 この試合において、ホームの浦和レッズは「4-1-2-3(4-3-3)」のシステムを採用し、アウェイのV・ファーレン長崎は従来の「3-4-2-1(守備時5-2-3)」で対峙した。

 前半のボールポゼッション率は浦和が53%、長崎が47%と数値上はほぼイーブンであった。長崎としてもボールを保持する時間をある程度確保できていたが、ピッチ上で生じていた現象には明確な内容差が存在していた。浦和が効率的に長崎のゴール前までボールを運び、決定的なアタックを繰り出していたのに対し、長崎はボールを持たされている時間が長く、シュートまで持ち込めるシーンが極めて少なかったのである。

 この展開を生み出した最大の要因は、両チームのシステムが引き起こす「構造的なミスマッチ」にあった。

浦和のビルドアップに対する長崎の前線プレスの限界

 浦和が4-1-2-3の陣形でビルドアップを開始する際、長崎の守備陣形である5-2-3の前線は3枚(トップのジョナタン・ジュニオール、シャドーの松本とマテウス・ジェズス)である。そのため、浦和のバック4(両センターバックと両サイドバック)に対して構造的な数的不利(3枚対4枚)が発生する。

 長崎はこの数的不利を解消するため、ウイングバック(WB)が高い位置へポジションを取り、浦和のサイドバック(SB)にボールが入った瞬間に素早く縦スライドしてプレスをかけることを試みた。しかし、長崎の5バックにおけるウイングバックと、相手のサイドバックとの物理的距離は決して近くない。毎回後方から素早く寄せてプレスを完結させることは困難であった。

 さらに、浦和の両ウイング(WG)が長崎の最終ラインに張り付くように高い位置を取っていたため、長崎のウイングバックは安易に縦スライドを行えなかった。ウイングバックが前に吊り出されれば、その背後に広大なスペースが生まれ、浦和の強力なウイングにダイレクトに晒される危険が生じるからである。

浦和のサイド攻撃と長崎の右サイドにおける「スペース問題」

 押し込みに成功した浦和は、ボールサイドのサイドバックが積極的にオーバーラップを敢行し、サイドからの崩しを徹底して行ってきた。

 特に浦和は左サイドからの攻撃を集中させていたが、ここには明確な狙いがあった。長崎の右シャドーに入っていたマテウス・ジェズスは、攻撃面で絶大な威力を誇る反面、守備時における自陣深くまでの帰陣やカバーリングが遅れがちな傾向がある。そのため、長崎の右ウイングバックの背後や右ボランチの脇にスペースが生まれやすく、浦和はその「長崎の右サイドの構造的弱点」を的確に突いて主導権を握っていたのである。

長崎のビルドアップと浦和のプレス回避策

 一方で、長崎がボールを保持して攻撃を組み立てる局面においても、浦和のプレッシング構造との間で激しい駆け引きが行われた。

 3バックでビルドアップを行う長崎に対し、浦和は4-1-2-3の前線3枚をそのまま長崎の3センターバックに噛み合わせ、数的同数(3枚対3枚)の状態でハイプレスを仕掛けてきた。そのままでは長崎の最終ラインは強いプレッシャーを受け、前線への不用意なロングボールを強要されてしまう。

 これに対し、長崎はボランチの長谷川がライン間から最終ラインへと降りてボールを引き出す。長谷川が後方に降りることで一時的に4枚のビルドアップ隊形を作り出し、数的優位を確保してボールをスムーズに捌こうとしたのである。これは第10節鹿島戦や第11節広島戦でも長崎のボール保持を支えた戦術的工夫であった。

 しかし、浦和側もこれを黙って見過ごしたわけではない。浦和のインサイドハーフである瀬古が、降りていく長谷川に対して追随する場面がみられた。これにより長谷川は前節のように余裕を持ってフリーで前を向くことができず、長崎のビルドアップは円滑さを欠くこととなった。

シャドーの位置取りが大外を生む構造と決定機不足

 長崎のシャドーである松本とマテウスは、浦和のアンカーを務めるグスタフソンの脇(ハーフスペース)に巧みにポジショニングを取っていた。

 この位置取りにより、浦和の両センターバックは長崎の1トップであるジョナタン・ジュニオールだけでなく、ハーフスペースに立つ長崎のシャドーの動きも警戒せざるを得なくなった。結果として、浦和のサイドバックは中央への絞りを強く意識せざるを得ず、長崎の大外(サイドレーン)に広大なスペースが発生する構造が生まれたのである。

 長崎はこの構造を活用し、大外に張ったウイングバックがボールを受けてドリブルで持ち上がり、ゴール前へクロスを供給するパターンを何度も作り出した。しかし、浦和のペナルティエリア内における集中力と個の守備力は極めて高く、クロスを入れるものの決定的なシュートにまで持ち込むシーンは限られていた。こうして、双方が決定打を欠いたまま前半は0-0の同点で終了した。

後半の戦術変更――「5-2-3」から「5-3-2」への可変

 スコアレスで迎えた後半、長崎の高木監督はベンチから動いた。守備システムを前半の「5-2-3」から「5-3-2」へと変更したのである。この変更の意図を考察すると2つの狙いがあると考える。

 第1の狙いは、前半から散見されていた「マテウスの守備問題」の解消である。右シャドーのマテウスを前線2トップの一角(あるいは守備時の負担が少ない位置)に押し上げ、中盤を3枚(保田、長谷川、山口など)で横並びに配置することで、マテウスの背後に生じる広大なスペースを中盤の枚数で埋めようとした。

 第2の狙いは、前線からのハメ込み(ハイプレス)の完結である。浦和の中盤3枚(グスタフソン、瀬古、もう一人のIH)に対し、長崎も中盤を3枚にすることで中央の噛み合わせを完全に同数にする。この状態で長崎のウイングバックが浦和のサイドバックへ素早く縦スライドできれば、ピッチ全体で完全にマンツーマン状態を作り出し、浦和のビルドアップを詰ませることができるはずであった。

 しかし、指揮官の計算通りに事は運ばなかった。試合後の監督コメントにもあった通り、チームの守備は前からハメるどころか、逆に「間延び」する結果となってしまったのである。

 なぜ、前線からの守備力を高めるはずの「5-3-2」への変更が、逆にプレスの無力化と間延びを招いてしまったのだろうか?

戦術的考察――なぜ「5-3-2」は裏目に出たのか

 5-3-2への変更によって生じた間延びのメカニズムを解き明かす鍵は、システムが最終ライン(センターバックやウイングバック)に与える「前傾意識」の違いにあると考える。

「5-2-3」がもたらす最終ラインの危機感と前傾意識

 「5-2-3」という陣形は、構造的に中盤が2枚しか存在しない。そのため、2ボランチの脇のハーフスペースや、ウイングバックの前のサイドレーンには広大なバイタルエリア・危険地域が存在する。

 このシステムで守る場合、最終ラインのディフェンス陣(特にセンターバックやウイングバック)は「自分が前に出て潰さなければ、ボランチ脇を使われて即ピンチになる」「大外にボールが出たら自分がリスクを冒して縦スライドしなければならない」という強い危機感を常時抱くことになる。つまり、5-2-3の構造そのものが、最終ラインの選手たちに自発的な「前への守備意識」を強制的に埋め込んでいたのである。

「5-3-2」による安心感の罠とライン押し上げの欠如

 ところが、守備陣形を「5-3-2」に変更すると、中盤に3枚のフィルターが配置されることになる。横にスライドすることでボランチ脇やハーフスペースの危険エリアが物理的に塞がれ、守備ブロックとしての見た目の安定感は向上する。

 しかし、これによって最終ラインの選手たちは「中盤が埋まっている」という心理的安心感を得てしまい、自らが前に出てチャレンジする危機感や「前傾意識」が薄れてしまったと考えられる。

 中盤3枚が横スライドで対応しているからこそ、最終ラインはステイして後方に留まってしまう。その結果、前線(2トップ)がプレスを仕掛けようとしても、後ろのラインが連動して上がってこないため、前線と最終ラインの間の距離が大きく広がってしまう。

 チーム全体が「後方重心」となり、コンパクトな陣形を保てなくなった長崎は、浦和に対して前からのプレスをまったくかけられない状態に陥った。

3. 71分の決勝点と準備不足の代償

 この「前後の分断」と「ラインを押し上げられない後方重心」が最悪の形で結実したのが、71分の浦和の決勝点シーンであった。

 ラインを高く保てず、前線との距離が開いていた長崎は、浦和の中盤からの鋭いスルーパスに対して最終ラインの足並みを揃えて対応することができなかった。押し上げの意識が薄れていたことで相手の飛び出しを許し、痛恨の失点を喫することとなったのである。

 高木監督としては、守備の穴を塞ぎつつ勝ち点3を狙うためのポジティブな修正のつもりであったが、結果としてチームの強度と連動性を奪う「裏目」の采配となってしまった。事前準備が十分に整っていない状態でのぶっつけ本番のシステム変更であったことが、この戦術的混乱を招いた大きな要因と言えるだろう。

今後の展望

 0-1での敗戦という悔しい結果に終わった浦和レッズ戦であったが、この試合が示した戦術的示唆は長崎の今後の成長において極めて大きい。

 長崎にとって「5-3-2」という陣形自体は決して未知のものではない。第7節の名古屋グランパス戦(2-0で勝利)においても、マテウスとチアゴサンタナを前線に並べる5-3-2のミドルブロックを採用し、今シーズン初のクリーンシートを達成している。

 しかし、名古屋戦では最初から「5-3-2でミドルブロックを組み、相手のサイド攻撃を誘い込んで跳ね返す」という明確なプランと意思統一が存在していた。これに対し、浦和戦での5-3-2は「5-2-3で前に行けなくなったための途中修正」であり、チームとして「どう連動してラインを上げるか」という共通認識が共有されないままピッチに投入されてしまった。

 システムそのものの優劣ではなく、「いつ、どのような意図で、どこまで落とし込んで使うか」という運用の精度の差が、名古屋戦の勝利と浦和戦の敗戦という両極端な結果を生んだと言える。

 今シーズンの長崎は、基本となる3バック(5バック)をベースにしながらも、展開に応じて試合中に4バック(4-4-2や4-2-4)へ可変させるなど、戦術的柔軟性を高める試みを繰り返してきた。

 浦和戦で露呈した「5-3-2における間延び」という課題も、トレーニングを通じて事前準備を重ね、チームの共有オプションとして磨き上げることができれば、後半戦で浦和をはじめとする強豪と再戦した際に強力な武器へと昇華するはずである。

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