2026-27シーズンの第8節において、V・ファーレン長崎はホームスタジアムにセレッソ大阪を迎えて対戦した。前節の名古屋グランパス戦で2-0の完勝を収め、今シーズン初となるクリーンシート(無失点勝利)を達成していた長崎にとって、本節は今期初となる「連勝」を掴み取るための絶好の機会であった。しかしながら1-1という引き分けであり、両チームが勝点1を分け合う結果となった。この引き分けにより、長崎の総勝点は8にとどまることとなった。順位表においては、前節終了時点で降格圏を脱出して14位に位置していたものの、本節の結果を受けて15位へとひとつ順位を下げる結果となった。
本戦のピッチ上で繰り広げられたのは、互いに「3-4-2-1」のフォーメーションをベースとしたミラーゲームであった。各エリアにおいて選手同士の1対1の構図が明確に生じる状況下で、双方がどのような戦術的アプローチを持ち込み、相手の弱点を突こうとしたのかが大きな見どころであった。勝利という至上命令を果たせなかったものの、試合内容全体を振り返れば、長崎にとっては十分に勝利に値する手応えと、今後のチームの進化を示唆する戦術的収穫が多く含まれていた一戦であったと言える。
フォーメーション・スタメン

両チームの守備陣形とビルドアップ構造の解体
守備時における両チームの陣形に着目すると、長崎およびセレッソ大阪の双方が**「5-2-3」の守備ブロック**を構築して対応していた。前節で長崎が対戦した名古屋グランパスは、ビルドアップ時にボランチの高嶺がアンカーの位置に入り、稲垣が左CBの位置へ落ちることで「4-1-2-3」へと変幻自在に可変していた。これに対してセレッソ大阪は、ビルドアップ時に変則的なシステム可変を行わず、オーソドックスな配置を保ったまま攻撃を展開してきた。
セレッソ大阪のビルドアップにおける主な狙いは、センターバックからのロングボールを前線のFW櫻川へ供給することや、長崎の守備ブロックを揺さぶる横パスを展開してからサイド突破を図る点にあった。特にセレッソ大阪は、FW櫻川を長崎のCB進藤の位置へと意図的に移動させ、身長差によるミスマッチを利用してボールを収めさせるという戦術的な工夫を施していた。
このように相手がビルドアップ時に可変を行わなかったため、長崎にとっては各エリアでの守備の噛み合わせが非常にはっきりしていた。その結果、長崎は守備時において1対1の局面を作りやすく、組織として非常に整備された守備構造を保つことが可能となった。
前半の攻防――立ち上がりの危機と先制ゴールの戦術的メカニズム
試合開始早々の前半4分、長崎は早くもピンチを迎えることとなる。長崎の左センターバックを務める江川が相手ボランチへのチェックを遅れて行ったことで、その隙を突いたセレッソ大阪の右ウイングバック奥田にライン裏へ抜け出されてしまった。奥田は巧みな切り返しから左足を振り抜いたものの、シュートは幸いにもわずかにゴール枠の外へと外れ、長崎は危ういところで失点を免れた。
一方、セレッソ大阪の守備面に目を向けると、前節での大量失点を深く反省した様子が窺え、トランジションの切り替え速度が格段に高まっていた。セレッソ大阪は長崎の強烈な外国籍アタッカー陣に対して徹底した対策を講じており、最前線のFWチアゴ・サンタナにはCB畠中がマンマーク気味に対処し、その背後のカバーリングをCB井上が担当していた。さらに、前線で脅威となるマテウス・ジェズスに対しては、ボランチのアーバインをマンマークとして張り付かせ、自由を奪おうとしていた。
しかし、前半34分に長崎は戦術的連携から見事な先制ゴールが生まれることとなる。得点シーンの起点となったのはマテウスの賢敏なポジショニングであった。マテウスは自身を追尾するアーバインのマークを外すため、セレッソ大阪の前線3枚が形成するゲートの間(ライン間・中盤)へと下りてボールを受けた。マテウスは素早く反転すると、前線のチアゴ・サンタナの足元へ鋭いパスを打ち込んだ。
ボールを受けたチアゴ・サンタナは相手を背負って確実にキープし、背後へダイアゴナルランを見せた翁長へスルーパスを通した。翁長がボールをトラップすると同時に、最初にパスを出した後に勢いよく前線へと駆け上がっていたマテウスがボールを引き継ぎ、キーパーとの1対1を迎えた。マテウスは飛び出してきたGKの頭上を越えさせる冷静沈着なループシュートを沈め、長崎に貴重な先制点をもたらした。
このゴールに至る過程には、選手たちの緻密な戦術的駆け引きが存在していた。チアゴ・サンタナはこの得点場面以前から、何度も相手ライン裏への突破動作を見せていた。そのためセレッソ大阪のディフェンス陣は、マテウスが前を向いた瞬間に背後へのスルーパスを警戒して警戒ラインを下げてしまっていた。チアゴ・サンタナはその裏をかき、あえて背後ではなく足元へと切り返してボールを受けたことで、フリーでボールを収めることに成功したのである。
さらに、試合を通じてマテウスとチアゴ・サンタナが流動的にポジションを入れ替えるシーンが見られた。前線へ単にロングボールを蹴り込むだけではない、多様でインテリジェンスに溢れた攻撃パターンを展開できるようになった点は、長崎の攻撃組織が確かな成長を遂げている証と言える。前半42分には、マテウスが放った強烈なミドルシュートがゴールポストを叩くなど、長崎が主導権を握ったまま1-0のリードで前半を折り返した。
後半の攻防――サイドの揺さぶりによる被弾と激しい決定機の応酬
後半に入ると、セレッソ大阪も反撃の姿勢を強めてきた。後半51分、長崎はセレッソ大阪のサイド攻撃から決定機を許し、痛恨の同点ゴールを与えてしまうこととなる。セレッソ大阪は長崎を敵陣に押し込むと、右センターバックを務めるクールズがサイドレーンの高い位置へと積極的にオーバーラップしてポジショニングを取る場面がしばしば見られていた。
同点に追いつかれたPK獲得のシーンにおいても、このクールズのポジションチェンジが大きな起点となった。右サイドから駆け上がったクールズがボールを受けると、長崎のペナルティエリア外へ向けてマイナスのグラウンダーパスを供給した。これに合わせようとしたフェルナンデスのダイレクトシュートはジャストミートしなかったものの、こぼれ球がフリーの岡澤のもとへ転がった。シュートブロックに入った長崎の米田が勢い余って足裏で岡澤の足を踏んでしまい、主審はセレッソ大阪にPKを与える判定を下した。このPKを冷静に決められ、試合は1-1の振り出しに戻された。ブロックを横断するパスから生まれた失点劇であった。
同点に追いつかれた長崎であったが、そこから怒涛の反撃を開始し、立て続けに勝ち越しの決定機を作り出した。主役となったのはサイドで精力的なプレーを見せた翁長であった。1つ目の決定機では、翁長が相手ネットを揺らしたものの、惜しくもオフサイドの判定によってゴールは取り消された。続く2つ目の決定機では、途中出場を果たした増山が右サイドから鋭い折り返しを中央へと送った。中央へ勢いよく走り込んだ翁長が、ボールをピッチへ叩きつけるような打点の高いヘディングシュートで合わせたが、打球は無情にもクロスバーを直撃し、勝ち越しゴールとはならなかった。
このシーンで素晴らしいチャンスメイクを見せた増山は、昨シーズンからの復帰後、久しぶりに長崎のユニフォームを着てピッチに帰還したプレーであった。昨シーズンにファンを魅了した圧倒的な爆発力のあるスピード、豊富な運動量、そして相手を圧倒するフィジカルの強さは健在であり、今後の長崎にとって大きな武器となることを印象づけた。
試合終盤にかけては、双方の意地がぶつかり合う凄絶な攻防が続いた。81分にはセレッソ大阪のアンドラーデが放った鋭いミドルシュートのこぼれ球に対し、大畑が素早く詰めて至近距離から狙う決定機が発生した。しかし、ここは長崎のゴールキーパー後藤が咄嗟に身体を投げ出し、必死のセーブで危機を脱した。また長崎も、試合終盤に途中投入された大型FW山崎がヘディングから相手ゴールを脅かす決定的なチャンスを得たものの、あと一歩のところでゴールネットを揺らすことができなかった。結局、両チームともに勝利への決定打を欠く形となり、1-1の引き分けでホイッスルを聞くこととなった。
戦術的考察――終盤に展開された「4バック可変」の構造と未来への示唆
本節のセレッソ大阪戦において、戦術的観点から最も興味深く、かつ今後の長崎の戦い方に大きな一石を投じたのが、試合終盤に長崎が見せた「4バックへの可変」の動きであった。
ピッチ上のメンバー構成とポジショニングを詳細に分析すると、長崎は左肩上がりの形状で一時的に4バックへとシステムを変化させていた。これは、ビハインド時やどうしても勝ち点3が欲しい場面において、前線の枚数を増やして怒涛の攻撃を仕掛ける「ファイアーフォーメーション」としての機能を果たしていたと言える。この可変が意味している重要な戦術的メッセージは、従来の5バック(3バック)で強固に守備ブロックを形成しつつ、攻撃への転換時には4バックへと可変するという、**「3バックと4バックの高度な併用」**の可能性である。
こうした試合状況に応じた3バックと4バックのシステム併用は、世界最高峰のクラブであるアトレティコ・マドリードなどでも日常的に採用されているアプローチである。以前の分析において、長崎が元来の5バックから不用意に4バックへ変更した場合、ディフェンス陣の守備範囲が広がりすぎてスライド対応が遅れ、かえって失点リスクを高めてしまう懸念が提示されていた。しかし、守備の安定感を5バックで担保した上で、攻撃時のみ限定的に4バックへと可変するシステムをマスターできれば、長崎の戦術的引き出しは格段に広がり、チームに劇的な構造改革をもたらすはずである。
現実問題として、現在の長崎が高木監督の下で長期間トレーニングを重ねてきたメインシステムは3バックであり、戦術の落とし込みに割ける時間が限られているリーグ戦の最中において、即座に4バック併用へ完全移行することは容易ではない。したがって、今後も長崎は3バックをベースとして戦いを継続し、4バック可変は「何としてでも得点が必要な終盤の特殊局面」に限定されて運用されるのが現実的であろう。しかしながら、強力な外国籍選手の個の力のみに頼る攻撃スタイルには自ずと限界が存在する。V・ファーレン長崎がJ1リーグの舞台で持続的に成長し、上位へ進出していくためには、この4バック可変システムを戦術的選択肢として洗練させていく努力が不可欠である。
次節へ向けた収穫と長崎の成長曲線
連勝こそ逃したものの、セレッソ大阪という実力派クラブを相手にミラーゲームで互角以上に渡り合い、多くの決定機を作り出した今回の1-1という結果は、長崎にとって決して悲観すべきものではない。マテウスとチアゴ・サンタナの連携熟成、増山の戦線復帰、そして終盤に見せた可変システムの萌芽など、チームが着実にステップアップを遂げていることを証明する要素が随所に散りばめられていた。
降格圏との境界線で一喜一憂するシビアな戦いは続くが、チームが掲げる戦術的コンセプトをブレずに追求し、さらなる細部の精度向上を図ることができれば、勝利という結果は自ずとついてくるはずだ。長崎の進化の軌跡に、今後も注目していきたい。

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