2026-27 第6節 V・ファーレン長崎 VS 名古屋グランパス

 開幕から厳しい戦いが続き、前節ヴィッセル神戸戦での完敗によって再び降格圏となる18位へと転落していたV・ファーレン長崎。失点が重なり、守備の再構築が急務とされる中で迎えた第7節は、ホームに名古屋グランパスを迎えての一戦となった。

 結果から言えば、2-0の完全勝利である。開幕戦以来となる今シーズン2勝目を挙げると同時に、ファン・サポーターが渇望していた今シーズン初のクリーンシート(無失点勝利)を達成した。この貴重な勝ち点3により、長崎は勝ち点を7へと伸ばし、順位も18位から14位へと一気にジャンプアップを果たすことに成功した。

 試合内容は、前半こそ名古屋にボールを握られる時間が長く続いたものの、後半にかけて攻勢を強め、最後まで粘り強く守り切るという、今シーズン最高のゲーム運びであった。前節の神戸戦で見られた守備の崩壊やトランスジションでの遅れとは打って変わり、チーム全体として明確な意図を持った戦いが展開されたのだ。

 なぜ長崎はこの試合においてこれまでの課題を修正し、名古屋を完封することができたのか。そして、攻撃において何が明暗を分けたのか。このゲームにおける構造的な噛み合わせと戦術的メカニズムを考察していく。

フォーメーション・スタメン

両チームとも3-4-2-1の基本布陣。
長崎はマテウスジェズスがリーグ戦初先発となった。

構造の噛み合わせ:「5-3-2」の採用と名古屋の可変ポゼッション

 まず注目すべきは、長崎の守備陣形と名古屋のポゼッション構造における「噛み合わせ」である。

 名古屋の基本フォーメーションは長崎と同じく「3-4-2-1」であり、盤面上はミラーゲームとなることが予想された。当然、チームのスタイル上、名古屋がボールを保持する時間が長くなることは試合前から織り込み済みであったと言える。実際に前半25分が経過した段階でのボール保持率は、長崎が30%に対して名古屋が70%と、極端に名古屋がボールを握る展開となった。

 しかし、長崎の守備アプローチにはこれまでと大きな変化が見られた。普段の長崎は「5-2-3」の布陣で前線からのプレッシングを試みることが多かったが、この試合では「5-3-2」のミドルブロックを採用してきたのだ。

 この「5-3-2」への変更には明確な理由が存在する。それは、この試合からスタメンに復帰したマテウス・ジェズスと、前線の軸であるチアゴ・サンタナの2トップを共存させるための戦略的決断である。無闇にハイプレスを仕掛けるのではなく、中央を締めてミドルエリアに強固なブロックを形成する選択を取ったのだ。

 対する名古屋のビルドアップは、非常に特徴的な可変構造を見せていた。ボランチの高嶺がアンカーの位置に留まり、もう一人のボランチである稲垣が左センターバックの位置まで落ちる。そして、本来の左右センターバックである原や徳元がサイドレーン高くへ広がることで、後方を実質的な4枚(4-1-2-3)へと変形させていたのである。

 このピッチ上の配置を整理すると、長崎の「5-3-2」に対して名古屋が「4-1-2-3」でビルドアップを行う形となる。ここで構造上のミスマッチが生じる。長崎の中盤3枚は、最も危険な中央のバイタルエリアへの縦パスを消すために中央へ固く絞るポジショニングを取る。その結果、名古屋のサイドバック化したセンターバック(原や徳元)がサイドレーンでフリーになるのだ。

 名古屋はこのフリーとなったサイドレーンを起点として攻撃を組み立てていた。しかし、これは長崎側から見れば「中央を遮断し、外に追いやっている」状態でもあった。名古屋の攻撃が中央突破ではなくサイドからの攻略に偏ったのは、長崎の守備構造が意図的に誘導した結果であると言える。

前半の攻防:粘り強いブロックと強烈な「個」による先制点

 名古屋にボールを持たせながらも、中央の急所を決して突かせない長崎の守備ブロックは非常に粘り強かった。バイタルエリアでのパスコースを消し続けたことで、名古屋のボール保持は怖さを欠き、長崎としては焦る必要のない展開が続いた。

 そして長崎の攻撃は、前線に君臨するチアゴ・サンタナとマテウス・ジェズスという圧倒的な物理的強度を誇る外国籍選手をターゲットマンとし、そこから展開するシンプルな形を徹底した。

 試合が動いたのは32分のことである。長崎がPKを獲得し、先制に成功する。このPK獲得に至るプロセスには、長崎の狙いが凝縮されていた。

 右サイドからのロングボールをチアゴ・サンタナが競り合い、そのセカンドボールを長崎が回収。すぐさま左サイドへと素早く展開する。ここで圧巻だったのが、左ウイングバックに入っていた翁長の攻撃関与である。相手の目線を揺さぶる見事なインナーラップでペナルティエリア内へと侵入し、名古屋の守備陣を完全に崩してPKを奪い取ったのだ。翁長の守備面での貢献はもちろんのこと、攻撃時に見せた走力と判断力は称賛に値する。

 このPKを、スタメン復帰を果たしたエースのマテウス・ジェズスが冷静沈着にゴールへ流し込み、長崎が貴重な先制点を奪い取った。

 前半のアディショナルタイムには、名古屋のフリーキックからゴール前で決定的なピンチを迎える場面もあった。しかし、運も味方して相手のシュートは枠を外れ、失点を免れた。我慢すべき時間帯を耐え抜き、1-0のリードを持って前半を折り返せたことは、精神的にも極めて大きかったと言える。

後半の展開:ネガティブトランジションの改善

 後半に入っても名古屋がボールを保持する構図に変わりはなかったが、57分に長崎が勝利を決定づける貴重な追加点を奪う。このゴールの起点となったのは、中盤での素早い攻守の切り替えであった。

 長谷川が相手の隙を見逃さず、前節の神戸戦で相手に見せつけられたような鋭いネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)を発揮してボールを強奪する。この場面の約5分前にも長谷川はボール奪取からチャンスを演出しており、彼の中盤での守備意識の高さが結実した瞬間であった。

 ボールを奪った長谷川は、すぐさま前線へ走り出すチアゴ・サンタナへ絶妙なスルーパスを送る。完全に相手ディフェンスラインを抜け出したチアゴ・サンタナは、飛び出してきた相手GKとの1対1で慌てることなく、美しい軌道を描くループシュートを選択。ボールは吸い込まれるようにゴールネットを揺らし、長崎に決定的な2点目をもたらしたのである。

 2点のリードを奪われた名古屋は、追いつくべくさらに攻勢を強めて長崎陣内へ押し込んでくる。しかし、長崎の集中力は最後まで途切れることがなかった。

 名古屋の攻撃は相変わらずサイドからの攻略が中心であったが、供給されるクロスの精度を欠き、長崎のディフェンス陣が確実に跳ね返し続けた。また、名古屋がバイタルエリアへパスを通そうとする場面でも、長崎の中盤と最終ラインが挟み込んで自由を与えない。名古屋側からすれば、バイタルエリアでのダイレクトプレーや、ダイアゴナルラン(斜めの走り込み)によって長崎のマークを外すような工夫が不足していたとも言えるが、長崎の「5-3-2」のブロックがそれらのスペースを消し去っていたことも事実である。

 結局、名古屋に最後まで決定的な形を作らせなかった長崎が、2-0のままたくましくタイムアップを迎え、見事なクリーンシート達成となったのである。

総括と考察:「長崎のサッカー」の本質と今後の課題

 この試合で長崎が見せた戦いは、まさにサポーターが求めていた「長崎のサッカー」そのものであった。走り勝つメンタリティは前提としてあるが、何よりも浮き彫りになったのは「V・ファーレン長崎というチームは、外国籍選手の圧倒的な能力を軸にしてこそ成り立つ」という現実である。

 そして、その超強力な個を最大限に活かす戦術をいかに構築できるかが、チームの生命線となる。

 マテウス・ジェズスがスタメンに復帰し、チアゴ・サンタナとの2枚看板が前線に揃ったことで、長崎の攻撃は見違えるほど力強くなった。元長崎のFW都倉賢がSNS(X)で言及していた通り、彼らが前線にいることで「ただの苦し紛れのクリアボール」が、「決定的なロングパス」へと変貌するのだ。前線でボールを収め、時間を創出し、自らボールを運んで打開できるマテウスの存在はまさに規格外であり、彼らの個性がチーム全体の押し上げを可能にしている。

 高木監督の目指すフットボールは、こうした圧倒的な個の優位性を引き出してこそ真価を発揮する。長崎が今シーズンJ1残留を果たすための最大の鍵は、これら外国籍選手のコンディション維持と負傷離脱の回避にあることが、この名古屋戦でより明確になったと言える。

 ただし、手放しで楽観視できない要素も存在する。 今回の攻撃アプローチは外国籍選手の「個」に頼る部分が非常に大きいため、相手センターバックに対人守備で圧倒的な強さを持つプレーヤーがいた場合や、彼らのコンディションが落ちた場合には、攻撃が手詰まりになる危険性を孕んでいる。再現性という観点においては、まだ課題が残されていると言わざるを得ない。また、名古屋の攻撃の精度や最終局面の工夫次第では失点していてもおかしくないシーンが存在したことも事実であり、決して慢心できる内容ではないのだ。

今後の展望:次節セレッソ大阪戦への期待

 それでも、敗戦が続き降格圏に沈んでいたチームにとって、ホームで強敵・名古屋を相手に2-0で完勝し、今期初のクリーンシートを達成した意味は極めて大きい。

 次節の対戦相手は、セレッソ大阪である。セレッソ大阪は名古屋と同様に、ボールを保持して主導権を握ることを好むチームである。長崎としては、今回見せた「5-3-2」の堅固なブロックで相手のポゼッションを受け止め、前線のマテウスとチアゴ・サンタナを起点とした鋭いカウンターを爆発させるという戦術的親和性が非常に高い相手だと言える。

 次節もホーム・ピーススタジアムでの開催となる。この名古屋戦で掴んだ手応えと確信を携え、何としてもホームで連勝を飾り、チームをさらなる上位へと勢いづけたいところだ。

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