2026-27 第2節 V・ファーレン長崎VSファジアーノ岡山

 2026-27シーズンのJ1リーグ第2節、アウェイでのファジアーノ岡山戦は、V・ファーレン長崎にとって課題を突きつけられる一戦となった。結果は0-1の敗戦。スコアこそ最小失点差ではあるが、その内容は単なる惜敗という言葉では片付けられない、戦術的・構造的な欠陥が浮き彫りになった90分間であったと言える。

フォーメーション・スタメン

両チームとも3-4-2-1のフォーメーション。長崎はFWチアゴサンタナではなく、山崎を先発起用してきた。

序盤の攻防と暗転したプラン

 試合の立ち上がり、長崎は決して悪いリズムではなかった。前半7分には、中盤の要である長谷川からの鋭いスルーパスに岩崎が抜け出し、決定的なシュートを放つ。しかし、この一撃は惜しくもポストを叩き、先制の絶好機を逃すこととなった。この「もし」が決まっていれば展開は大きく変わっていた可能性はあるが、結果的にこれがこの試合最大のハイライトとなってしまった事実は重い。

 前半14分、岡山のセンターバック鈴木が自らドリブルで中央へ持ち込み、フォワードのルカオへラストパス。ルカオがネットを揺らしたものの、これはエドゥアルドの見事なラインコントロールによってオフサイドの判定となった。しかし、この防波堤となっていたエドゥアルドに異変が起きる。19分、ルカオとの激しい接触をきっかけにエドゥアルドが負傷し、新井がその穴を埋める形になりエドゥアルドは無念の交代を余儀なくされたのである。

「ミラーゲーム」における戦術的優劣

 この試合において、両チームは3-4-2-1のフォーメーションを採用し、いわゆる「ミラーゲーム」の様相を呈していた。通常、同じ布陣同士の対戦では、局面ごとの数的優位をいかに作り出すか、そして選手個々の「質」の差が勝敗を分ける鍵となる。

 守備面において、両チームともに前線からのハイプレスを信条としていたが、攻撃のプロセスにおいて決定的な差が生じていた。岡山は、最終ラインでボールを保持した際、オベルダンが最終ラインまで下りてビルドアップを助け、さらには江坂がボランチの位置まで顔を出してボールを引き出す動きを見せた。これにより、岡山は局所的に数的優位を作り出し、円滑なボール循環を実現していたのである。

 対する長崎は、後半の途中までフォーメーションの形に固執し、ポジションチェンジによる揺さぶりをほとんど行わなかった。この硬直した布陣は、岡山にとってプレスをかける対象を明確にさせる結果となり、長崎のセンターバックは余裕を持ってボールを運ぶことができず、苦し紛れのロングボールを前線へ放り出す場面が目立った。

ロングボール戦術の機能不全とエースの不在

 長崎の攻撃が停滞した最大の要因は、ワントップに入った山崎へのロングボールが全く収まらなかったことにある。岡山のルカオがその屈強なフィジカルを活かして前線で起点となっていたのに対し、山崎は相手の厳しいマークに遭い、セカンドボールも拾えない状況が続いた。

 山崎のポストプレーはJ2時代から収まりがいいとはいえず、無策に彼へロングボールを供給し続けることは戦術的に愚かであると個人的に思っている。もしロングボールを主体とするならば、単純に山崎へ当てるのではなく、相手のウイングバックを釣り出し、その背後のスペースへ山崎を流して受けさせるなどの工夫が必要であった。こうしたディテールへのこだわりを欠いたまま、選手個人の奮闘に頼る姿勢が、攻撃の閉塞感を生んでいたのである。

 後半開始とともに、長崎は山崎に代えてチアゴサンタナを投入し、局面の打開を図った。しかし、コンディションの問題か、期待されたほどのボール保持はできず、流れを引き寄せるには至らなかった。

決定的な失点とオフサイドラインの崩壊

 試合を決定づける瞬間は54分に訪れた。岡山のボランチ宮本が、絶妙なタイミングで裏へ抜けたルカオに向けてロングボールを送る。ルカオは強烈なシュートをニア上に突き刺し、長崎のゴールをこじ開けた。

 この失点シーンには、長崎の守備組織の綻びが凝縮されていた。本来であればオフサイドを取れるタイミングであったが、ウイングバックの関口がセンターバックよりも後方に残っていたために、ルカオの抜け出しを許してしまったのである。ルカオの、一度オフサイドポジションに留まってから加速して戻り、再び裏を狙うという老獪な動きに翻弄された形となった。

終盤に見せたかすかな希望

 0-1とリードを許した後、長崎にもようやく変化の兆しが見られた。後半途中から長谷川をボランチに下げてビルドアップに関わらせ、途中出場の洪怜鎮が低い位置からボールを捌くようになると、チーム全体が前を向いてプレーする時間が増えた。

 ロングボール一辺倒ではなく、地上戦でのパス回しを織り交ぜることで、ようやく岡山ゴールへ迫る姿勢を示すことができた点は、数少ない収穫と言えるだろう。しかし、こうした「繋ぐ意識」が高木監督の第一選択ではないという懸念があるため、場当たり的な修正に留まってしまう危険性を孕んでいる。

長崎が直面している構造的な課題

 今回の岡山戦での敗戦は、長崎が抱える構造的な問題を再認識させるものとなった。岡山が見せた「ハイプレスで相手に質の悪いボールを蹴らせ、回収してルカオを軸に二次攻撃を仕掛ける」というスタイルこそ、本来長崎が目指すべき姿であったはずだ。皮肉にも、理想としていたサッカーを相手に完璧に体現されてしまったのである。

 現在の長崎は、外国籍選手の「個」の能力に依存しすぎる傾向がある。これまでのJ1での戦いにおいても、マテウスなどのスーパーゴールで勝利をもぎ取る場面はあったが、組織としての攻撃の骨組みが脆弱であることは否めない。特に、最終ラインからのビルドアップの構築がシーズンオフからなされていないように見受けられる現状では、格上の相手に対して組織的に崩す術を持っていないと言わざるを得ない。私が今シーズンの長崎の順位を「16位」と厳しく予想している背景には、こうした修正力の欠如と戦術的発展性のなさが挙げられている。

 高木監督にとって、ロングボール以外の選択肢をいかに組織に組み込むかは大きな壁となっている。もしエースのチアゴサンタナが離脱するような事態になれば、攻撃は完全に沈黙してしまうだろう。

次節、柏レイソル戦への展望

 岡山戦という苦い教訓を経て、長崎は次節、柏レイソルとの戦いに挑む。柏はボール保持を前提とするチームであるため、長崎としては守備の時間が長くなることが予想される。

 ここで重要になるのは、原点に立ち返り、前線からのハイプレスを徹底することである。相手のミスを誘発し、いかに高い位置でボールを奪ってショートカウンターへ繋げられるか。今回の岡山戦よりも、ある意味では戦い方が明確になる分、やりやすさを感じる可能性はある。

 しかし、失点を許せば今の攻撃力で逆転することは極めて困難である。まずは失点を防ぐ粘り強い守備を構築し、アウェイという厳しい環境下で勝点1でも持ち帰ることができれば、それはチームにとって大きな再出発の一歩となるはずだ。長崎にとって、今は美しい勝利よりも、泥臭く課題を一つひとつ克服していく姿勢が求められている。岡山戦の敗北を単なる「1敗」に終わらせるのか、それとも成長の糧にできるのか。今、長崎の真価が問われている。

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