2026-27 第1節 V・ファーレン長崎VS京都サンガFC

 2026-27シーズンのJ1リーグがついに幕を開けた。V・ファーレン長崎にとって、ホームで迎えるこの開幕戦は、単なる一試合以上の意味を持っていた。昨シーズンの「百年構想リーグ」での激闘を経て掴み取ったJ1の舞台において、京都サンガFCを相手にどのような戦いを見せるのか。スタジアムの熱気は最高潮に達し、多くのファン・サポーターが新たなステージでの飛躍を期待して見守る中、試合は開始されたのである。

フォーメーション・スタメン

 長崎は昨シーズンと同じ3-4-2-1、京都は4-2-3-1の基本布陣。

1. 試合開始直後の電撃弾と長崎の狙い

 試合は開始早々から、長崎の攻撃的な姿勢が鮮明となった。開始わずか20秒、左インサイドハーフ(IH)として起用された岩崎が、左サイドの深い位置からドリブルを開始する。彼は対峙した京都のセンターバック(CB)ウェベルトンを抜き去り、ゴール前へ鋭いクロスを供給した。ここに走り込んだエースのチアゴ・サンタナがゴール隅へヘディングで合わせたが、京都の守護神・太田のファインセーブに阻まれ、惜しくも先制点とはならなかった。

 さらに前半3分20秒には、再びチアゴ・サンタナがボレーシュートを放ち、ボールがクロスバーを叩くシーンも見られた。長崎は守備時において、昨シーズンと同様の5-2-3の布陣を敷いたが、今節で際立っていたのはIHを務めた岩崎と長谷川の運動量である。彼らは試合開始からエンジン全開で前線からのプレスを敢行し、京都のビルドアップに制限をかけた。このハイプレスにより、京都に意図しないロングボールを蹴らせ、それを長崎の守備陣が着実に回収することで、試合の主導権を完全に握ることに成功したのである。

2. 京都のミスと先制点の背景

 主導権を握った長崎に、待望の先制点がもたらされたのは、京都側のミスを逃さない集中力からであった。京都は左サイドのスローインから逆サイドへの展開を試み、ボランチ(VO)のジョアン・ペドロからCBウェベルトンへバックパスを送った。ウェベルトンは右サイドバック(SB)福田の位置を確認しようと顔を上げた(ルックアップした)が、その瞬間に足元のボールコントロールが乱れ、ボールが体から離れてしまった。

この隙を、長崎のストライカー、チアゴ・サンタナは見逃さなかった。彼は猛然とボールを奪取し、GKとの1対1の状況を作り出すと、冷静なループシュートでゴールネットを揺らしたのである。これは長崎にとってJ1復帰後の初ゴールであり、スタジアムは歓喜の渦に包まれた。この得点は、前線からの連動したプレスが実を結んだ結果であり、京都のビルドアップの不安定さを突いた見事なゴールであったと言える。

3. 進化した長崎の攻撃バリエーション

 長崎の基本的な攻撃スタイルは、昨シーズンから継続してチアゴ・サンタナへのシンプルなロングフィードを軸としている。彼が最前線でボールを収めて周囲に散らし、そこからサイドの選手が駆け上がってクロスを供給するという流れである。しかし、この試合では昨シーズンとは異なる新たな進化が見られた。

 具体的には、相手を押し込んだ局面において、ウイングバック(WB)から逆サイドのWBへのロングパスを用いた大きな展開や、右CB土肥から左WB翁長への対角線上のロングパスが頻繁に見られたのである。これにより、京都の守備ブロックを横に大きく揺さぶることが可能となり、攻撃の幅が格段に広がっていた。こうした「横への揺さぶり」は、昨シーズンの課題を克服しようとするチームの意図が感じられるポジティブな変化であった。

4. 前半29分:チアゴ・サンタナの追加点

 攻撃の手を緩めない長崎は、29分に追加点を奪う。得点のきっかけは、左サイドからのスローインであった。翁長が素早くリスタートし、京都の右サイド深くに侵入した岩崎へボールを渡す。岩崎はマイナス気味のグラウンダーのパスを中央のチアゴ・サンタナへ供給した。チアゴ・サンタナは一度トラップしてシュートコースを確保すると、強烈な左足の振りでゴールを射抜いた。

 このゴールにより、長崎は2点のリードを奪う。チアゴ・サンタナの個の能力の高さはもちろんのこと、翁長の素早い判断と岩崎の正確なラストパスが融合した、極めて質の高い攻撃であった。前半を通じて、長崎は試合を支配し、完璧な流れでハーフタイムを迎えることとなったのである。

5. 京都の戦術的苦境と長崎の守備的規律

 なぜ京都は前半、長崎の守備を攻略できなかったのか。その要因を分析すると、京都の可変システムの機能不全が見えてくる。京都はビルドアップ時、右SB福田を高い位置に上げ、右サイドハーフ(SH)の加藤をハーフスペースへ絞らせることで、最終ラインを3バック化させる可変システムを採用していた。

 京都の狙いは、福田を警戒して長崎の左WB翁長が前方に釣り出された際、その背後のスペースを突くことにあったと考えられる。加藤が中央に絞ることで中盤での数的優位を作り、中央から崩す意図もあったはずだ。しかし、京都はこの中央の数的優位を全く活かすことができなかった。

 その背景には、長崎側の徹底した守備対策があった。長崎は自軍のボランチ脇(VO脇)が弱点であることを自覚しており、前線の3枚(チアゴ、岩崎、長谷川)が中央へのパスコースを遮断するように緻密なポジショニングを取っていた。特にチアゴ・サンタナは、京都のボランチ1枚を消すように立ち、岩崎と長谷川は中央に絞ることでVO脇へのパスを許さなかった。

 さらに、岩崎と長谷川のプレスは「がむしゃら」なものではなくなっていた。彼らは自身の後方やサイドの状況、プレスがハマる可能性を確認してから連動しており、行ける時には行き、行けない時にはブロックを組むという「メリハリ」が効いていたのである。この守備の規律こそが、昨シーズンの「百年構想リーグ」時代からの大きな成長点であった。

6. 後半の攻防と京都の戦術修正

 後半に入ると、2点を追う京都は大胆に動いた。平戸、福岡、エンリケ・トレヴィザンを下げ、尹星俊、アレックス・ソウザ、永田の3人を投入したのである。これは縦のラインを入れ替える交代であり、特にパス配給に長けた尹星俊を投入した点は、前半に中央の数的優位を活かせなかった反省に基づいたものであったと推察される。

 交代策と並行して、長崎が前半に比べて前線からのプレスを緩めたこともあり、京都のボール保持率は高まっていった。そして54分、京都はついに長崎の守備を崩し、得点を奪うことに成功する。この得点は、長崎の懸念材料であった「2VO脇」を見事に攻略したものであった。

 右CBウェベルトンからのパスを受けた右SH加藤に対し、長崎の左CB大南がマークのために前方に大きく釣り出された。これによって生じたスペースへ、途中交代のアレックス・ソウザが侵入してボールを受け、前を向く。再び加藤を経由してゴール前へ送られたグラウンダーのパスを、ダイアゴナルランで飛び込んだ新井が後ろへ流し、最後はラファエル・エリアスが仕留めたのである。

 ラファエル・エリアスに対応していたのは右WBの関口であったが、体格的なミスマッチがあり、ペナルティエリア内であったためファウルもできず、体制を入れ替えられての失点となった。このシーンは、京都の緻密な組み立てと個の強さが発揮された瞬間であった。しかし、京都の反撃もここまでであった。その後のチャンスもラストパスやシュートの精度を欠き、追加点を奪うまでには至らなかったのである。

7. 京都の現状と課題への視座

 本試合を通じて特筆すべきは、京都の守備強度の低さである。「百年構想リーグ」での京都は、走り負けないインテンシティの高いサッカーと激しいハイプレスが代名詞であったはずだ。しかし、この試合では前線からのプレスは影を潜め、相手のパスコースを限定するような組織的な守備も見られなかった。

 結果として、ボール回しを得意としないはずの長崎が自由にボールを動かせる状況を作り出していた。京都は攻撃面での修正は見せたものの、守備における規律やフィルター機能の低下という課題を露呈したと言わざるを得ない。他チームのサポーターの視点からも、京都は守備の再構築が必要であると感じさせる内容であった。

8. 長崎の収穫と今後の展望

 勝利した長崎にとって、最大の収穫はホーム開幕戦という重圧の中で、前線からの連動したプレスが昨シーズンよりも洗練されていることを証明した点にある。しかし、手放しで喜べる内容ばかりではない。得点の場面は京都側のミスに起因する部分もあり、課題も明確に見えている。

 特に攻撃面では、エースのチアゴ・サンタナへの依存度が依然として高い。この試合では中心選手の一人であるマテウス・ジェズスが出場していなかったため、攻撃のターゲットがチアゴ・サンタナに限定され、相手に対策を立てられやすい状況となっていた。前線でボールを収められない時間帯が増えると、守備の負担が増大するという構造は変わっておらず、今後の改善が不可欠である。

 次節はアウェイでのファジアーノ岡山戦が控えている。「百年構想リーグ」ではシーズンダブルを達成した相手ではあるが、内容は決して良いとは言えず、長崎にとっては相性が悪い相手である。岡山は堅守を誇るチームであり、長崎が苦手とするブロック攻略を強いられることになるだろう。また、ルカオ、ナサンホ、江坂といった強力な攻撃陣を長崎の守備陣がどう抑えるかも大きな見どころとなる。

 J1という新たな舞台での戦いは始まったばかりである。京都戦での勝利という結果を自信にしつつも、露呈した課題に対して真摯に向き合い、改善を積み重ねていくこと。京都サンガFCとのこの一戦は、長い旅路における重要な、そして希望に満ちた第1歩だ。

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