【戦術分析】V長崎 VS ファジアーノ岡山|マテウスの「解放」と山崎が示したストライカーの真価

 アウェイの地でファジアーノ岡山と対戦したV-ファーレン長崎は、途中出場したFW山崎によるアディショナルタイムの劇的な得点によって1-0で勝利した。岡山とのこれまでの対戦成績は、岡山8勝、長崎4勝、10引き分けであり、長崎が岡山に対して苦手意識があるのはこの成績からわかる。
 3連戦を締めくくるこの一戦は、昇格組である長崎にとって、現在の立ち位置と修正力を問われる重要なゲームとなった。

フォーメーション・スタメン

 両チームとも[3-4-2-1]の基本フォーメーション。具体的なメンバー変更は割愛するが、長崎はGK含めて9人、岡山は4人を変更。

鏡合わせの「3-4-2-1」と5バックの攻防

 長崎は前線のマテウス・ジェズス、岡山はルカオという、圧倒的な個の能力を持つ選手をターゲットに据え、そこを起点に攻撃を組み立てるという、非常に似通った構図で試合は幕を開けた 。

 守備局面においては、両者ともにウイングバックを下げた「5-2-3」のブロックを形成。この噛み合わせの良さが、序盤の激しいプレス合戦を生むこととなる。同じシステム同士の対戦において、重要となるのは「3バックの脇」のスペースだ。両チームとも、このエリアにロングフィードを送り込み、シャドーの選手を走らせることで相手の5バックを横に揺さぶり、綻びを作ろうとする意図が見て取れた。

 18分には岡山のルカオが左サイドを突破し、中への折り返しから決定機を演出。まさに、選手の個を活かす攻撃の内容であった。

ビルドアップの変遷と停滞した前半

 20分を過ぎたあたりから、長崎は序盤のロングフィード主体の攻めを控え、後方からボールを繋ぐビルドアップへとシフトチェンジを図る。しかし、これが裏目に出る形となった。岡山の連動したプレスを前に、ボールを前進させることができず、25分には不用意な形でボールを失い、シュートまで持ち込まれる危うい場面を招いてしまう。

 ボールを保持する時間こそ増えたものの、それは「持たされている」状況に近く、シュートという出口を見出せない時間が続いた。前半43分にマテウスが左サイドから強引に突破して放ったシュートが、前半で最も得点の可能性を感じさせたシーンであったが、結局、長崎の前半のシュート本数はわずか2本に留まった。マテウスを最前線のターゲットとして固定していたため、彼にロングフィードを収めてもらうことはいいのだが、それ以降の攻撃が繋がらなかった。マテウス自身の本来の脅威を発揮できていなかったことが長崎の攻撃が停滞する大きな要因であっただろう。

指揮官の決断:マテウスの役割変更と山崎の投入

 後半60分より長崎のベンチが動く。ノーマン・キャンベルを下げ、山崎をピッチに送り出した。この交代は単なる選手の入れ替えではなく、前線のメカニズムを変化させるものだった。

 守備時にはマテウスを最前線に残す一方で、攻撃時には山崎がトップのポジションを取り、マテウスをサイドへとスライドさせたのである。この配置転換こそが、この試合のターニングポイントとなった。サイドにポジションを取ることで、マテウスは「前を向いた状態」でボールを受けることが可能になった。前半のように相手を背負う形ではなく、得意のドリブルで仕掛けるスペースと視野を確保したマテウスは、岡山の守備陣にとっての脅威を与えるものになる。

待望の瞬間と岩崎の精密なクロス

 試合が動いたのは、後半アディショナルタイムであった。
 左サイドでボールを持った岩崎がフェイントで相手DFを一瞬躱し、中へクロスを供給する。中央で待ち構えていたのは、後半から投入された山崎であった。打点の高いヘディングで合わせたシュートがネットを揺らし、長崎が先制に成功する。

 山崎にとっては、ここまで期待されながらも目に見える結果が出せず、苦しい時間を過ごしていただだけに、まさに「溜飲を下げる」一撃となったはずだ。ファン・サポーターにとっても、前節活躍できなかったストライカーが最も必要な場面で決めてくれたことは、何物にも代えがたい喜びであっただろう。

岡山の猛攻を凌いだ守備陣の集中力

 先制を許した岡山も、黙ってはいなかった。ブロックを押し込み、サイドからのクロスを多用して長崎ゴールを脅かす。僅かにクロスがズレるなど、幸運な側面もあったが、長崎の守備陣は最後まで集中力を切らさず、虎の子の1点を守り抜いた。特に岡山のサイド攻撃に対して、5バックがスライドを徹底し、中央での自由を許さなかった点は、これまでのリーグ戦での経験が活かされていたと言える。

混戦のWESTを勝ち抜くために

 この勝利により、長崎は直近の3連戦を2勝1敗と勝ち越して終えることができた。これは長丁場のリーグ戦において非常に大きな意味を持つ。

 現在、グループWESTの順位表を見ると、1位から9位までが勝点3差の中にひしめくという、凄まじい混戦模様を呈している。一戦の勝敗が順位を大きく入れ替える状況下で、苦しい試合を勝ち切る力、そして試合中に的確な戦術的修正を行える力は、長崎にとって大きな武器となるだろう。

 今回の岡山戦で見せた「マテウスの配置転換」と「山崎の起用」は素晴らしい采配であったと思う。FWチアゴサンタナの負傷欠場によっての采配であるが、柔軟な対応ができているのが強みと言っていいだろう。次節以降も、この柔軟性と勝負強さを維持できるか。J1という厳しい舞台で生き残り、さらなる高みを目指す長崎の挑戦は、まだ始まったばかりである。

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