【戦術分析】第16節 V長崎 VS セレッソ大阪|攻略されたハイプレスと「個」の輝き、残された課題

 アウェイで行われた第16節、セレッソ大阪戦を振り返る。結果は2-3という惜敗。後半アディショナルタイムに献上したPKによって勝ち越しを許すという、非常に悔しい幕切れとなった。

 試合全体を振り返れば、見ていてハラハラするエキサイティングな展開ではあった。しかし、内容に目を向ければ、ホームのセレッソ大阪に圧倒された試合だったと言わざるを得ない。シュート本数を見ても、セレッソの21本に対し、長崎はわずか8本。スタッツが示す通り、終始押し込まれる時間が長かったのである。

 今回の記事では、長崎のハイプレスがいかにして空振りさせられたのか、そして後半の修正とエースの復帰がもたらしたものについて、戦術的な視点から深く掘り下げていきたい。

フォーメーション・スタメン

 長崎は[3-4-2-1]の基本布陣。前節から4人メンバー変更。
 セレッソは[4-2-3-1]の基本布陣。前節からこちらも4人メンバー変更。

ハイプレスの設計と「噛み合わせ」の齟齬

 試合開始直後の5分から10分にかけて、長崎はアグレッシブなハイプレスを披露した。この時間帯はセレッソに自由なビルドアップを許さず、試合の主導権を握るべく前線から圧力をかけていた。

 長崎の守備陣形は[5-2-3]である。前線からのプレスを完結させるため、以下のような役割分担がなされていた。

  • FW山崎: 相手ボランチ1枚を徹底してマーク。
  • 2ST(ノーマン・キャンベル、長谷川): 相手のセンターバック(CB)へプレスを掛ける。
  • 中盤(2VO): 相手のもう1枚のボランチとシャドーストライカー(ST)を監視する。

 この設計により、中盤の数的不利(長崎2人に対し、セレッソはボランチ2枚+ST1枚の計3人)を、FW山崎をボランチの監視に回すことで同数化し、封じ込めようという意図が見て取れた。

 しかし、この[5-2-3]という布陣は、中央に2ボランチ(2VO)しか置かないため、その周囲に広大な空白スペースを生んでしまうリスクを内包している。セレッソはこの構造的な弱点を、ある一人の選手の動きによって冷徹に突いてきたのである。

柴山昌也がもたらした「守備組織の破壊」

 長崎の守備を機能不全に陥れた最大の要因は、右SHで先発したセレッソの柴山のオフ・ザ・ボールの動きであった。彼のプレーは、長崎の守備システムに対して極めて理にかなった「プレス回避」を実現していた。

 柴山はサイドレーンに留まることなく、内側のハーフスペースへ頻繁にポジショニングを取る。特に、長崎の左STであるノーマン・キャンベルの後方に潜り込む動きが秀逸であった。この位置取りをされると、長崎側はマークの受け渡しが困難になる。中央の2ボランチ(VO)が食いつけば中央を空けてしまい、WBの米田が追えば背後のスペースを晒すことになる。結果として、誰も柴山を捕まえきれない状況が生まれたのである。

 柴山は下がってボールを引き出してはワンタッチでマークを剥がし、長崎のプレスを無効化し続けた。本来、中盤を同数にして守るはずの長崎だったが、柴山の変幻自在な動きによって再び数的不利を突きつけられる形となったのである。ハイプレスを空振りさせられた長崎は、必然的に自陣へと押し込まれることとなった。

現場での判断:プレス続行か、ブロック形成か

 ここで問われたのは、プレスが回避された後の「修正の決断」である。前線から行くのか、それともミドル・ローブロックへ移行するのか。

この試合の長崎は、プレスが上手くいかない状況下でも、2ST(ノーマン・キャンベル、長谷川)が高い位置を取り続けていた。チームとして「前から行く」というプランを堅持しようとしたのだろう。しかし、ボランチの負担は限界を超えていた。スライドだけでは広大なスペースをカバーしきれず、ボランチ間の距離(ゲート)が広がり、その背後の選手へ容易に縦パスを入れられる悪循環に陥った。

 セレッソの先制点は、まさにこうした攻略の積み重ねの果てに生まれたものである。失点直後のさらなる失点などは精神的な油断と捉えられがちだが、戦術的には既にブロックが崩壊し始めていたことが根本的な原因であった。

マテウス・ジェズスの帰還と5-4-1への移行

 劣勢の中で迎えた後半60分、長崎はエースのマテウス・ジェズスを投入する。同時に、守備システムを[5-4-1]のミドルブロックへと変更した。

 この変更は非常に現実的かつ理にかなったものであった。連戦による疲労を考慮し、かつ個の能力に秀でるマテウスを活かすには、前から無理に追うよりも、スペースを消して強固なブロックを作り、カウンター一閃で仕留める方が勝算が高いからである。

 その判断は、72分に結実する。マテウス・ジェズスが自陣から50メートル以上を独走し、最後は個人技でネットを揺らすスーパーゴールを叩き出した。チームの修正力と、エースの圧倒的な個の力が融合した瞬間であった。

激闘の代償と次節への展望

 試合終盤、セレッソの猛攻はさらに激しさを増した。特に左WB横山のドリブルには手を焼き、何度も決定機を作られた。GK波多野のPKストップというビッグプレーもあり、執念の粘りを見せたものの、アディショナルタイムに再び与えたPKが勝負を分けた。懸命に守り続けた照山を責めることは酷であるが、チームとして22本ものシュートを浴びた事実は重い。

 今回の試合から得られた教訓は明確である。
 第一に、ブロックを形成した際の「コンパクトさ」の徹底だ。[5-4-1]で守っていた時間帯も、選手間の距離が適切に保てず、セレッソに攻略の糸口を与えてしまっていた。
第二に、守備のスイッチを入れるラインの設定である。前から行く時と、引いて守る時の境界をより明確にし、チーム全体で共有する必要があるだろう。

 そして、エース・マテウス・ジェズスの起用法についても収穫があった。今回のような[5-4-1]でのカウンターの尖兵としての役割は、彼の爆発力を最大化させる一つの解と言える。

 敗戦という結果は重いが、強豪を相手に一時同点に追いつき、エースの健在を示したことはポジティブに捉えたい。次節、修正された「コンパクトな守備」と「鋭いカウンター」が見られることを期待している。

 長崎の戦いは、まだ道半ばである。次こそは、内容と結果を両立させた勝利を掴み取ってほしい。

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