V・ファーレン長崎|百年構想リーグの戦術変遷

 J1復帰を果たした百年構想リーグ。チームは強豪との対戦を通じて激しい戦術的な変化と進化を遂げてきた。今回は、2026-27シーズン開幕前に百年構想リーグの第1節から第18節までの歩みを、「J1の洗礼」「試行錯誤の4バック」「露呈した限界」「守備基準の再構築」という4つのフェーズに分けて、V・ファーレン長崎の戦術変遷をまとめていく。本記事を読んでもらって、長崎がどのような成長を遂げてきたのかを振り返り、新しいシーズンへ期待を高めてもらえたらと思う。

第1フェーズ:J1の洗礼と「個」の差(第1節~2節)

 J1という舞台に戻ってきた長崎を待っていたのは、サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸というトップクラスの強度であった。この2試合で、チームはJ1レベルのインテンシティと決定力の差を痛感させられることになる。

 広島戦では、5-3-2のブロックで守備を固める戦術を採用した。しかし、最前線のFWチアゴ・サンタナとMFマテウス・ジェズスのファーストラインでは相手への制限がかからず、終始押し込まれる展開を強いられた。続く神戸戦では、J2時代から慣れ親しんだ5-2-3ブロックに切り替えたものの、今度は2ボランチの脇という致命的なスペースを有効活用され、ブロックを攻略されてしまう。

 攻撃面でも課題は明白であった。広島戦での4バックによるビルドアップ、神戸戦での3バックでの試み、いずれも相手のハイプレスに対して数的同数でハメられ、ビルドアップが停滞。結局、苦し紛れのロングボールを蹴るしかなくなり、前線で収められないためにボール保持すらままならない状況が続きいた。神戸戦は0-2というスコア以上に、修正力の差と選手個々の能力差が浮き彫りになった幕開けでした。

第2フェーズ:試行錯誤と「4バック」の導入(第3節~5節)

 開幕2連敗という最悪のスタートから、チームは迅速な修正を見せる。第3節の名古屋グランパス戦では、相手の守備強度不足を突き、効果的なロングフィードから得点を重ね3-1でJ1復帰後初勝利を飾った。

 特筆すべきは第4節のセレッソ大阪戦である。ここで長崎は4バックシステムを採用してきた。この変更の意図は「攻撃」よりも「守備」にあった。前線から相手をハメやすくすることを優先した結果であり、攻撃自体は依然としてロングフィードを主体としたものであったが、これが功を奏し1-0で連勝を飾る。

 しかし、課題も同時に露呈した。第5節のガンバ大阪戦では、4バックでスタートし前半を2-1でリードして折り返すものの、後半に相手が後方3枚でのビルドアップに修正してきたことで一気に押し込まれ、2-3の逆転負けを喫しました。ここで**「相手の修正に対する再修正」**という新たな課題が突きつけられたのです。

第3フェーズ:チアゴ・サンタナ負傷と「限界」の露呈(第6節~11節)

 第6節の福岡戦、第8節の岡山戦では勝利を収めたものの、内容は決して楽観視できるものではなかった。いずれの試合も長崎がボールを保持する展開となったが、それは「持たされている」状況に近く、相手の守備ブロックを攻略する術を持っていないことが露呈した。

 追い打ちをかけたのが、第7節京都サンガF.C.戦でのエース、チアゴ・サンタナの負傷離脱である。これまでロングフィードのターゲットとして絶対的な存在だった彼を欠いたことで、攻撃は完全に停滞した。この時期、長崎のサッカーが「外国籍選手という個」に極度に依存していることが誰の目にも明らかとなった。

 さらに深刻だったのは、守備における規律の欠如だ。第10節の福岡戦では、カウンターの鋭さはあるものの、マテウス・ジェズスが守備に走れないために簡単に押し込まれる展開が続いた。**「前から守備に行きたいのに、行けない」**というジレンマに陥り、マテウスの守備免除がチームの限界として指摘されるようになった。

 第9節の清水戦からは、CBの負傷者続出によりMF翁長をCBで起用するという策が始まった。システムも相手に合わせて4バックと3バックを併用していたが、清水の「まさかの3バック採用」という奇策に対応できず0-3で完敗。続く広島戦でも0-2と手も足も出ない敗戦を喫し、ここでチームは大きな決断を下すことになる。

第4フェーズ:守備基準の再構築とマテウスの変容(第11節~18節)

 第11節の広島戦を機に、チームはJ2時代から絶対的な主力であったマテウス・ジェズスを先発から外すという荒治療を行う。

 この「マテウス不在の6試合」こそが、今シーズンの戦術的なターニングポイントとなった。マテウスを外したことで、チームは前線からの連動したハイプレスを徹底できるようになり、新たな守備の基準を設けることに成功した。相手に簡単にファーストラインを越えさせないという守備の規律が浸透したのだ。

 システム面でも変化がみられた。第12節のガンバ大阪戦以降、相手の布陣に関わらず3バック(5バック)での戦い方を固定化。翁長のCB起用も定着し、守備における積極的なプレスが見られるようになった。

 そして迎えた第17節の神戸戦。10節以来のスタメン復帰を果たしたマテウスは、以前とは別人のような姿を見せる。チームが作り上げた「守備の基準」にアジャストし、献身的な守備で走り回る選手へと進化したのだ。PK戦ではGK後藤が、キッカーの動きをギリギリまで見極める技術の向上を見せ、強豪・神戸を相手に勝利(PK勝)を掴み取った。


戦術分析まとめ:18節を終えての見解

 第18節までの戦いを振り返ると、長崎の戦術は「個への依存」から「組織としての規律」へと重心を移してきたと言える。

〇 ポジティブな変化

  1. 守備基準の確立:マテウスの離脱期間を経て、前線からの積極的なハイプレスがチームのアイデンティティとなった。これにより、格上相手でも簡単に崩されない粘り強さが生まれた。
  2. マテウス・ジェズスの覚醒:守備を免除されたエースではなく、組織の一員として走り、かつ攻撃の個性を発揮する唯一無二の存在へと昇華した。

● 依然として残る課題

  1. ビルドアップの設計不足:3バック固定後も、相手のプレスに対して論理的にボールを運ぶ仕組みは不十分であり、依然としてロングボール頼みになる場面が散見される。
  2. ブロック攻略の限界:相手が引いて守った際、流動的なパスワークで崩すことができず、最終的には「外国籍選手の個」によるワンチャンスに頼らざるを得ない状況が続いている。
  3. 上位勢とのインテンシティ差:広島、神戸、京都といった強度を売りとするチームに対しては、まだ組織的な対応だけでは補いきれない差が存在している。

 1のビルドアップに関しては、もしかしたらこれからも解決されない問題かもしれないと個人的に思っている。高木監督はビルドアップの構造を落とし込める監督でないと思っているからだ。しかし、コーチ陣にそれができる方がいれば変わるかもしれない。

おわりに

 J1での戦いは、まさに「弱点を突かれ、それを修正する」ことが重要になってくる。序盤に突きつけられた「個への依存」と「守備強度の不足」という課題に対し、マテウスのベンチ外という英断を経て、チームは一回り大きく成長させた。

 2026-27シーズンを勝ち抜いていくうえで重要なのは、守備強度の改善であるだろう。得点力がある反面、J1チームの中でも失点数が多いのが目に見えており、そのためにDF大南・土肥を新しく獲得した。堅牢な守備とボールを奪った後の素早いカウンター攻撃の2本柱が長崎の生命線になると考えている。その中で、外国籍選手に頼りすぎずに連携を高めることができれば、クラブ初となるJ1残留も見えてくるに違いない。

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